2021年に読んだ本

毎年、1年間で100冊くらいの本を読んでいて、自分のことを読書家だと思っていたんだけど全然違ったよ。私は単に

電車の中で本を読んで時間をつぶす人

だったんだ。通勤が無くなったら本を読まなくなった。自分の趣味を自慢している人、もし環境が変わってもそれをやり続けるのが本当の趣味だから、そこんとこをよく考えてから自慢した方がいい。その点で、結婚や出産をしても好きでいつづけ、ついでに旦那までなんとなく好きになっちゃう北川景子のファンは立派だ。昨年に読んだ本はたった26冊で、寝る前に読んだ怪談集を除いて紹介する。なお、自分が読んだ本や見たビデオを私が紹介しているのは、この中のいくつか「あ、それオレも面白かった」というものがあったら私と趣味が同じ人なので、もし未読の作品があったら同じく面白いと思えるはずだからである。

小学生から寄せられた質問に対して脳科学の池谷先生が答える本。「頭がよくなる薬はありますか?」という質問でも「そんなこと質問してるヒマがあったら勉強しろボケ!」とは言わないで、脳科学の見地から真面目に答えている。そして落とし所を小学生でもできることに帰結しているのがさすが。回答もさることながら、それを子どもにどう説明するかの参考になる良書。

「女流作家」という棚がある本屋がいまでもあるがもう意味がないよね。この作者なんか骨太のハードボイルドからミステリまでなんでも書ける人だからね。ほとんど人が立ち寄らないさびれたドライブインを親から引き継いだ主人公。彼女は事故で娘を亡くしたことから立ち直れて無く、人から離れるためにここにいる。そこに家出をした幼い兄と妹が「夏休みが終わるまでここに置いてください」と訪ねてくる...なんかハートウォーミングな物語かなと思うと、さすがのこの作者、この兄妹が持ち逃げした物を探しているヤバい奴がいる。

最近のミステリの単行本、こういうカバーが多いのだがマイナスだと思うよ。私も事前に紹介文を読んでなかったら絶対に手に取らなかったもん。探偵を主人公にして連作短編集。名探偵の助手になる主人公だが、その名探偵は一作目であっけなく死んでしまう。事務所を引き継いで探偵業を続ける主人公の二作目からが本番。この本と、つぎに紹介する本は共通点があり、それは「屍人荘の殺人」同様に現実にはありえない設定を読者了解のもとで一つだけ入れ、それ以外は論理的に解決をするもの。本作は日本の犯罪史に残る事件の犯人が現代に蘇り、同様の事件を起こす。

だからこういうカバーはよせと言っているのに。本作は姿を透明にできるとか、異常な聴覚を持っているとか、アイドルヲタクだけが集まった裁判員裁判とか一つだけ非現実的な設定を入れた短編集。全編、趣向が違うので楽しめる。

コロナ関係で数少ないまともな論評(感染症の専門家が誰もわからないと言った第5波の収束時期を事前に予測している)で記事に目を通していたので本も読んでみた。筆者がそう書いているわけではなく、私が筆者の書いたものを読んでの感想だが、大切なのは事実を取りこぼしなく拾いあげ、それだけで物事を判断することだな。当たり前に思うかもしれないが、実際にはこれをネタに政権をはじめ誰かを批判したい、この事実で励起される感情を増幅したい、そういったバイアスが発生する。

もうベテランといって良いだろう。いまだにこんなぶっ飛んだ物語が書ける伊坂幸太郎に脱帽。この人、何年か連続で直木賞候補になっては落選したので、もう候補に入れないでくれと辞退したんだよね。

村の駐在所の警官が失踪し、県警本部から派遣された調査官と後任の駐在が調査を進める。過去に起こった事件や事故との関連、そして大型複合施設をめぐる闇が現われてくる。名探偵が出てきて一発で謎を解くミステリーに飽きたら、すったもんだしながら一歩ずつ真実に迫るこういった小説をどうぞ。

本のカバーに出ている間取り図。よく見ると変な箇所がいくつも見つかる。これは何のためか? 最初の方はYouTubeで見たことがあるな。どこまでがノンフィクションかわからないがけっこうスリリング。最後の方はぶっ飛んだ内容なので好き好きかな。