「日本語の構造は英語やドイツ語に比べて論理的でない」と書かれた物を読んだことがあるし、英語の先生も言ったような気がする。だが日本語が論理を考えるのに向いてない言語だったら、日本語を母国語にする人たちが21世紀に入ってから自然科学分野でもっとも多い数の
ノーベル賞を取れるか? この人たちの中には流暢に英語を話す人もいるし、ほぼ全員が英語で論文を発表している。だが、物を考えるときは母国語で考えていると筆者は主張する。たしかにそうだ。では日本語のどういう点が英語などの
ラテン語系の言語や中国語に比べて論理を表現するのに優れているのか?という本だと思ったら違った。
ミステリーのアンソロ
ジー。
京極夏彦が選んだことになっている。なっているって別に疑っているわけではないけど。別の本で読んだことがある話もあったが古本屋で200円だったからいいや。
たぶん作者が新境地に挑戦したのだと思う。登場人物が軽くて、軽妙な会話で話が進んでいく物語を書きたかったんだと思う。
直木賞も獲り、現在の日本のミステリを代表する作家が新しいジャンルに挑戦した。その点はナイストライ!と賞賛したい。ジャンプ系のマンガ家は彼の爪の垢を煎じて飲んで欲しい。なぜ一作だけで満足してしまう。だがこの分野の覇者、
伊坂幸太郎の作品と比べると本作には何が足りないか、逆に
伊坂幸太郎は何が優れていて何に注意をして作品を書いているのかがわかる。終章で意外な事実が明かされ、そこまでが軽いノリが伏線だったという展開は見事。であるからよけいに登場人物のキャラが立ってないのが惜しまれる。
タイトルはふざけているがなかなかの良書。私は「戦争反対!」「
憲法改正反対!」と叫んでいる人に胡散臭さと無責任さを感じてしまうのだが、これだよこれ、と思う部分が多かった。
朝日新聞を読んで
ニュースステーションを見てうなずいている人に読んで欲しい。
「ピケティが見落としている」につられて買ってしまったが、筆者が長年研究している株式会社とは何かについての本だった。
これもタイトルで買ってしまった。私は別にエリートになりたいわけでもないが「証明力」に釣られた。中身はビジネスマンが身につけておきたい数学の素養についての本。私はエリートではないが、理系なのでこのくらいは知ってます。
BOOKOFFで500円だったので買った本。復讐代行業者が主人公の連作短編集。それほど薄くない本なのにどんどんページが進む。なんでだ? と思ったら会話文でもないところで改行が多い。ほとんど実話怪談のフォーマット。ふつうの小説のような、つまり学校で習う改行規則だったらこの本って3分の1くらいの厚さになるのではないか。500円だ
からしかたないか。いや高い!
先月も読んだ人気作家による実話風怪談小説集。あと1冊なんだよな。早くつぎを!
7月に読んだ唯一の骨太の小説。3つの警察署が別々の殺人事件を追っている。被害者はすべて子ども。捜査をしている刑事は過去の事件や警察組織内のトラブルで心に傷を負っている。それとは別に定年間近のサラリーマンの日常が描かれる。無関係なこの人の章があるということは犯人か。でも事件との接点がまったくみえない、どう見ても善人。この4人が交互に描かれるのが3分の2あたりまで。犯人が残した痕跡はあるものの捜査はそれ以上進まない。ある出来事から一人の刑事が別の刑事に連絡を取り二人の情報が合わさる。さらにあるきっかけでもう一人の刑事の情報が加わったとき犯人の輪郭が露わになる。うまいなあ、
五十嵐貴久。そして犯人の意外な動機(ちょっと無理がある)、ラストの意外な展開。
作者が得意な
安楽椅子探偵物。刑事が飲み屋で友人のサラリーマンに最近起こった事件を(新聞に発表した程度の差し障りない範囲で)話す。その話から、警察が見落としている事件の別の側面をサラリーマンが指摘する。どれも鮮やかな論理なのだが、このパターン、たくさん読むと飽きてくる。
超能力が認知され、超能力検定という国家試験まである近未来だか並行世界の日本。その超能力者を集め、コン
トロールする術を教え、その能力を生かして探偵をする事務所が舞台。ある意味、小規模の
X-men。ただ
X-menのようなすごい能力ではなく、テレパシーと、物を触って残留思念から失踪者や犯人の手掛かりを得るというもの。事務所のメンバーは超能力者であるが故の、または超能力者だから抜け出せた過去を引きずっているのがミソ。ア
イデアは良いのだ。ミステリーにおいて関係者の聞き込みや証拠を探す時間を超能力で短縮しているだけで、最後はその材料から事件の真相を推理したり、事件を解決するミステリーなのだ。だが、個性的なはずの所員だが人物造形が甘いので、いまいち物語に入り込めない。これなんかも足りない部分を脚本や演出で補うと面白いドラマになりそう。