2月に読んだ本

戦場のコックたち

戦場のコックたち

てっきり戦争で荒んだ兵士たちを料理で癒やすクッキングパパの兵士版かと思ったらぜんぜん違った。たしかに主人公は兵士の食事係だが、そればかりやっているわけではなくて作戦のときは銃を持って戦う。そしてこの本では料理を作っている時間より作戦の時間のが長い。主人公はアメリカ兵、ノルマンディー上陸作戦の直前にヨーロッパに配属になる。そこで予備のパラシュートを酒と交換で集めている兵士、夜の雪原をさまよう幽霊などミステリーのジャンルでは「日常の謎」に属する。日常といってもそこは戦場。すでに非日常なのだがな。だが謎解きよりこの作品はディティールが秀逸。まるでそこにいた人が書いたかのようなリアルさと細かさ。たしか「オーブランの少女」を書いた人だよな。次回作が楽しみだ。


もらい泣き (集英社文庫)

もらい泣き (集英社文庫)

私が買ったのはこの文庫本ではなくて古本屋で買った単行本。作者が友人知人、読者から集めた実話を元に書いた泣けるショートストーリー33編。寝る前に読んでいたが、本当に泣ける話は2編くらいだった。


at Home (角川文庫)

at Home (角川文庫)

家族をテーマにした短編集。だがこの作者のこと、生ぬるい話ではない。ただ、この作者はラストを書きすぎるような気がするな。もう少しスパッと終わらせた方が余韻が残るかも。


真実の10メートル手前

真実の10メートル手前

初の2年連続「このミステリーがすごい」で1位を獲った作者の新作。ほかの作品にも出てきた女性の探偵を主人公にした連作短編集。意外な結末にストンと落ちる手際は実に見事なのだが、事件がどれも悲惨すぎる。探偵が到達する真実がどれも残酷すぎる。意外と後味が悪い作品集。


宇宙、物理、地球、医学などのテーマで現代の科学はどこまでがわかってなにがわからないかを解説した本。この作者の本を以前にも読んだことがあるが説明が上手だ。最先端の科学の紹介をしながらも理系の人も文系の人も楽しめる。


6月31日の同窓会

6月31日の同窓会

以前に読んだ作品は視点や時制を混乱させてただわかりにくくしただけのあざとさがあったが、これはストレートなミステリ。お嬢様学校の卒業生に同窓会の招待状、それも開催日が6月31日で届き、つぎつぎと死んでいく。なにかもう一歩の感じがする作品だが、作者の成長と心意気は認める。