以前に書いたが、ミステリーかホラーかと思って買ったらファンタ
ジーだった本。ただ異界の戦いみたいなのは最終章だけでそこまではミステリー。現代は名探偵の居場所がない。19世紀なら
シャーロック・ホームズの頭脳がなければ解けなかった謎も警察の捜査でわかってしまう。探偵が成立するには警察が来られない南海の孤島か吹雪の山荘といった舞台を用意するしかない。この小説の主人公は異界から来た魔物の能力を借りて殺人犯を探す。この魔物は
異世界においての戦いのために殺人犯が持っている「欲望」をエネルギーとして吸収する。この魔物の存在によって素人の主人公は探偵になれたわけだ。だが犯人から魔物がエネルギーを吸収するとその犯人は消滅してしまう。つまり被害者の遺族から見ると永遠に犯人が見つからない迷宮入りの事件になってしまう。物語の後半で主人公もそれに気づくが、その事実への苦しみ方が足りないように思った。
年末から隔月で
伊坂幸太郎の新作が読める幸せ。今回は「ヒーロー物」だ。だがそのヒーローの武器が磁石というズレっぷりが作者ならでは。舞台設定はかなり陰鬱、気が滅入る話が続くが、変なヒーローと、そのヒーローを逮捕するために本庁から来た変な刑事が出てくると物語が一気に楽しくなる。この作者が書く話は必ず勧善懲悪、必ずハッピーエンドになるのが安心して読める。
この本、表紙のイラストで損をしているよな。正統派のミステリーなのになんでこのイラストにするかな。
今年のベスト1はこれだ。まだ9ヶ月もあるが、もしこれを抜く小説が読めるかな。日本のような狭くて平和な島国を舞台にして冒険小説、謀略小説は書けないと言われる。日本人の作家が日本を舞台にしてこんな話を書けたのがすごい。ある出来事がきっかけで隠遁生活を送っている元
公安警察のエリートの元に仕事の話が持ち込まれる。二人の若い男女の父親のふりをして山荘のそばの家に住み、山荘で働くというもの。依頼主の
公安警察もなにかを隠していて、それとは別に二重三重の陰謀が進んでいる。主人公はこの山荘でほとんど見捨てられて人間不信になっている
ドーベルマンを引き取り世話をすることにする。小説の3分の2あたりまでは淡々と山荘での暮らしが描かれ、徐々に明らかになる二人の男女の過去、なかなか心を開かない犬、山荘を訪ねてくる怪しい人物と少しずつ伏線が張られていく。この部分がまったく飽きないのがこの作品のすごいところ。そして物語は発火点を迎え山荘が急襲されクライマックスになる。もうラストの犬との別れのシーンなんか号泣だよ。
「ヤバい経済学」の著者の経済学者が書いた本。先入観、常識、虚栄心、これらをすべて捨ててゼロから考える大切さを楽しい実例をまじえて解説する。高名な先生らしいが、学者がこういう本を書けるのが
アメリカという国の層の厚さだと思った。
ちょいと予想と違った本だった。この時代だからこそこれを読めっていくつかの
思想書が出てきて、それのエッセンスが解説されているのだけど、こんなの原本はとっても読めないよ。外務官僚ってみんなこんなのを勉強してるのか。すげえな