4月に読んだ本

11 eleven

11 eleven

SF、ホラー、ミステリー...ジャンルを付けようがない傑作短編集。この人は進化をしつづけてるね。ラストをあえてきれいにまとめないのも特徴。


日本ミステリー文学大賞新人賞 受賞作 クリーピー

日本ミステリー文学大賞新人賞 受賞作 クリーピー

なにかの新人賞受賞作。作者はどこかの大学の先生。主人公は作者を投影しているような犯罪心理学の教授。近所で不可解な殺人事件が起こる。助けを求めに来た隣家の少女とその失踪。だんだん絡め取られる主人公。前半はいい。だが新人にありがちな最後の盛り上げ方とまとめからの拙さが惜しい。これからに期待だ。


米国に「ナショナル・ストーリー・プロジェクト」というのがあって、びっくりする話、おもしろい話、ちょっといい話を募集する。ひとつひとつは1〜2ページのショートストーリー、だが膨大な数の中から審査員が選んで1冊の本にするという企画があるらしい。それ自体は新潮文庫から和訳が出ているが、本書はそれの日本版。なぜか選者は内田先生。米国と日本では寄せられた話の傾向がまったく違っていて、米国は自分に何が起こって、その出来事を自分はどう感じたかという話が多い。まとまりは無いがインパクトがある。対して日本は読み手が理解できること、共感できることを強く意識して書かれた話が多い。ストーリーとしてはきれいだが似たような話が多い。これが国民性なのだろう。


PK

PK

作者ではめずらしいSFの中編が3本。最後の1本は以前に紹介した「NOVA5」に収録されたものを加筆したもの。SFと言っても舞台は現代の日本。伊坂節はあいかわらず。複数の登場人物が並行して描かれ、無駄話のような会話やどうでもいいエピソードが語られるが、終盤でそれがすべてつながって「ストン」と落ちる。2作目なんかすごいぞ。○ー○ー○ンが出てくるんだから。もっと読みたい。


九月が永遠に続けば (新潮文庫)

九月が永遠に続けば (新潮文庫)

この人の本、本屋にやたら置いてあるよね。BOOKOFFでも必ず見かけるので読んでみた。これはデビュー作なんだろうか。家の前にごみを出しに行った息子がそのまま失踪。わずかな手がかりで行方を探す母親。なんとなく面白そうだろ。だが、さすがデビュー作、息子の失踪という中核の謎が明らかになったときの納得のできなさが...ある人がある行動を取ればこの話は成り立たなくなると思うのだが。そしてその行動を取るのが自然だし、それができない理由が見あたらない。


消失グラデーション

消失グラデーション

これも新人作家のデビュー作らしい。よくわからず買ったら私が苦手な青春学園ミステリー。と思ったら、なにこれ面白い。主人公や周りの人物が真っ直ぐすぎても胃がもたれる。斜を向きすぎていてもわざとらしい。そのころあいが丁度いい。学校で起こった殺人事件を主人公と友人が調査する。探偵役の友人がつかんだ手がかりで主人公がつっぱしり「あなたが犯人ですね」。それが繰り返される。ひとつの事件を複数の探偵役が別々の推理をするという話はあるが、主人公がことごとくまちがった推理を披露するというのは新しいパターン。ここまででもよくできているのに、最後にとんでもない仕掛け。それはもうとんでもない。


ユリゴコロ

ユリゴコロ

2つ前で紹介した作者の最新作。おお、すごい進歩だ。この2つの作品はどの位の年月が空いているのか知らんがたいへんな進歩。ラストはちょっと無理があるのだが、気持ち悪い話に不釣り合いなハッピーエンド。あまりの爽やかさに強引なラストが消し飛んだ。まいった。


罪悪

罪悪

3月に紹介したドイツの作家の第二弾。内容は前作と同じ弁護士が自分が関わった事件を語るもの。といっても週刊誌にあるようなルポではなく、完全に文学になっているのだよ。唯一の欠点は薄いんだよね、本が。


日本の文脈

日本の文脈

内田先生と中沢新一の対談集。「交換」から「贈与」へ