冬の映画まつり「ドント・ブリーズ」

タイトルは「息を止めろ」でもいいだろ。じわじわ評判が良くなってきた「この世界の片隅に」を見ようと思ったら開演時間にまにあわない。しかたないので、それより遅いこの映画を見た。なに、この傑作! ここ数年で観たホラー映画でいちばん面白かった。いや、幽霊もゾンビも出ないからホラー映画ではないのか。よくホラー映画で観客をびっくりさせるような仕掛けがあるでしょ。なにか気配を感じるのでそーっと振り返ると何もいなくて、なーんだと前を見るとそこにいるみたいな。もうそういうパターンに慣れてしまっていて「ああ、ここで来るな」とわかっちゃうので逆にそういう演出が鼻につく。だがこの映画はうまいうまい。2回くらい椅子からお尻が浮いた。エンドロールを見たらプロデューサーの一人にサム・ライミが入ってるじゃん。初代ゾンビ監督ね。もうほんと、設定のうまさというかアイデアの勝利というか。首がちょん切れたり腸が出たりはしないからホラー映画が苦手な人にもお勧め。ほとんど家の中だし、CGも使ってないから制作費がかかってないよね。この記事を見たら*1、制作費が1000万ドル(11億円)以下で、興行収入が116億円だって。「ジャパニーズ・ホラー」なんて言うけど、いやいやアメリカ映画の底力を見せつけられたよ。全編、張り詰めた緊張感を絶やさずに、次から次へと見せ場を作るこのノウハウは日本には無いな。で、どんな映画か書いてないな。こそ泥を続ける若者3人が忍び込んだ家には盲目の老人がいた。ところがこの老人、退役軍人でめっちゃ強い。家は屋敷ではないのだがアメリカなのでそこそこ広い。素人の若者と、盲目だが強くて家の中は知り尽くしている強い老人。このバランスがじつに絶妙。老人は拳銃を持っていて若者を撃つ。ただ見えないので致命傷だったかがわからなくて実はかすっただけ。なので登場人物が少ないわりに、何度も殺されて、実はまだ生きていてまた殺されて実はまだ生きていて...と一人で何人分もの恐怖シーンを引き受けるという。やはり映画は脚本と演出だなとつくづく思ったホラー映画というかサスペンス映画の良作であった。