1月に読んだ本

だんだん読書のペースが戻ってきた1月。

     崖の上で踊る

 はてなブログになると書籍の引用の画像がでかいよ。ある企業が作った家庭用風力発電機は発生する低周波のため利用者が慢性の偏頭痛を起こす。被害者が訴訟を起こしたが、発病しない人も多く因果関係が立証できない。ネットで知り合った被害者たちが集まって、その会社の幹部3人を殺害する計画を立てた。保養所にそのうちの一人をおびき出し殺害することに成功。だが何者かに仲間の一人が死体で発見される。自分たちは殺人者なのにで警察を呼べない。明後日に2人目を殺害する計画は続行と決めたが、つぎつぎと殺される仲間。いったい誰が何の目的で...吹雪の山荘でも南海の孤島でもないが、クローズドサークル(外界と連絡が取れず助けを呼べない広範囲の密室)の状況。ラストの謎解きの論理を楽しむ小説なので、いとも簡単に人が殺され、仲間が殺されたことによる心の変化があまりない。こういう小説は映画にして肉付けをすると「小説より映画のがイイ」となる。

 

怪を編む: ショートショート・アンソロジー (光文社文庫)

 人気作家によるショートショートのホラーアンソロジー。画像がでかくなったので表紙に書いてある作家の名前がぜんぶ読めるね。この本を読んで思ったのが、実話系ホラーは完全な創作だとしても実話っぽくしないといけないのでシチュエーションに制限がある。本書はそれがないのでゾンビあり、宇宙人あり、ただのイヤな話ありで楽しめる。

 

スコーレNo.4 (光文社文庫)

これは良い本。青少年にお勧めする。「スコーレ」とは英語のスクールの語源であるギリシャ語。主人公の中学年生、高校生、社会人1年目、社会人3年目の4つの話。各時代で主人公は悩み、挫折し、もがき、希望を見いだす。その課程、そこに主人公を追い込んだ状況こそが主人公が成長するための4つのスコーレだったのだと。そうは一言も書かれていないがそれしかない。この主人公が中学1年のときからとにかく内省的。そこまで考えて悩まなくてもテキトーに楽しくやんなよと爺さんは思ってしまう。だが、だからこそ本の早い段階で読者は主人公の思考回路と完全にシンクロし、ひたすら苦しく、やがて楽しい読書体験ができる。この本は出版されたときは話題にもならなかったが、数年後に書店員が選ぶ本かなにかになって売れ出したらしい。最近の本屋大賞って、その作者のその作品をいまさら選ぶなよってのが多いが、こういう本を世に出すのが君らの仕事じゃないのか。なお、一つ上で紹介した本とは逆に、この本は映像化に向いてない。

 

少女を殺す100の方法

すごいタイトルだが、4つの短編から成るミステリー(あえて分類すれば)。どれも少女が大量に惨殺される。ところがどの話も少女の大量虐殺は話の借景でしかなく、本題は別にあるというすごい話。全国学図書館協議会に推薦されることは絶対にないし、映画化できるならやってみろ。絶対に無理だぞ。

 

あがり

大学の研究室を舞台にした連作短編SF集。第一話のラストがいきなり地球上の全生物の滅亡って、どんな本だよ。第二話も遅かれ早かれ人類は滅ぶよねって話だし。第三話以降はもっとおとなしくなるが、すべてバッドテイスト。だが、大学の研究室のディティールが興味深く、それぞれ生物学や数学の現代の課題というか関心事項がベースにあり、サイエンスおたくは楽しめる。

 

そこにいるのに

著者初のホラー短編集。平山夢明のテイストに似ているエグい話が多く、ストーリー自体は凝っているが最近のホラー短編として見るとラストのひねりが弱いかな。

 

それ、なんで流行ってるの? 隠れたニーズを見つけるインサイト思考 (ディスカヴァー携書)

日テレの「ZIP!」を見ている方は知っているはず。少し前まで金曜日のレギュラーだったハゲのおっさんが著者。サブタイトルになっている「インサイト」は「潜在的なニーズ」とか「隠れた欲望」とか「そう、それ!」。ヒットした製品、作品、言葉はみんなこれを発見できているという本。「家売るオンナ」の三軒家万智もまさに客のインサイトを見つける能力に秀でているわけだ。