検証・これが実写版の台本だ!−act44(その3)

で、結局のところ亜美の作ったクッキーは失敗作だったのか、それとも台本ではふつうのクッキーだったのか。ト書きには記述がないので登場人物の会話で類推するしかない。

     亜美「まこちゃんみたいにうまくはないけど」

     ・・・・・

     古幡「うん、結構おいしい−」

     ・・・・・

     ネフ「まずい」

まず最初の亜美のセリフだが、比べる相手がお料理上手のまことなので、並みの出来でもこのセリフになるだろう。これでは何とも言えない。最後のネフ吉の「まずい」は、彼が天の邪鬼であること、また女の子の作った物をもらう気恥ずかしさから出たセリフなので、これも何とも言えない。問題は亀吉のセリフだ。見るからにおいしそうな物に対して「結構おいしい」と言うだろうか。少なくとも我が家で女房が作った物に対して「結構おいしい」と言うのは想像するのだに恐ろしい。すると、亜美の作ったクッキーは焦げているかはわからないが、見た目はまずそうだったのかもしれない。たとえば、形が歪だとか。
だが、クッキー型を使えば、歪な形にはならないのか。すると、ここでクッキーという食材を選んだのが小林靖子の失敗と言える。だし巻き玉子とか黒豆とか難しい食材にすれば、それを亜美が持ってきた時点で「大成功とはほど遠いできあがり」と視聴者に自然に受け入れられたのかもしれない。だが、ここにそんなものを持ってくるのを視聴者に自然に受け入れてもらうのは難しい。
放送では最後の3行はカットされているが、この場面を想像するのは楽しい。美奈子の登場によって物語は一気に緊張する。亜美は紙袋をネフ吉に押しつけて美奈子の後を追う。ネフ吉はこれ幸いとばかり紙袋からクッキーを食べ続ける。後の展開がわかっているだけにカットして欲しくなかったシーンだ。
(つづく)