6月に読んだ本

そろそろ読書に向かない季節になってきたねえ。

山岳怪談集。以前も書いたが、この人の作品は最初から8割くらいまでがただの登山の話。それでも興味深く読ませる筆力がすごい。


かがみの孤城

かがみの孤城

2017年のフィクション部門の暫定一位がこれ。この人には書けないジャンルが無いのか? 本作はファンタジーなのだが、異世界の定義がきっちり決められて、その世界観の中で合理的に物語が進行するのでファンタジーが苦手な読者(私とか)も退屈しない。むしろ物語のテーマが現代的で重い。そしてこのファンタジー世界は登場人物が現実世界で抱える問題の助けにはまったくならない。最後の2章でのサプライズも見事で読者を裏切らない安定感が抜群。


平和ボケ お花畑を論破するリアリストの思考法

平和ボケ お花畑を論破するリアリストの思考法

平和憲法憲法9条、平和憲法憲法9条」と念仏を唱えていれば平和は保たれると信じている左巻きの人たちを「平和ボケのお花畑」と断罪し、その人たちとの議論のしかたを説く本。ためになるよ。


世界のニュースなんてテレビだけでわかるか!ボケ!!…でも本当は知りたいかも。

世界のニュースなんてテレビだけでわかるか!ボケ!!…でも本当は知りたいかも。

リーマンショック」、「ギリシャ危機」など、なんとなくは知っているが他人に説明できるほどは理解していない人に、やさしい例を使って解説してくれる本。その例がばかばかしすぎてかえってわからないという。


実話怪談風のホラー小説集。あくまでの「風」なのでストーリーがダイナミック。この人の短編、最後は怖いものに追いかけられるパターンが多い。たしかに追いかけられるのは怖いし、もし捕まっていたらその話自体が人に伝わらないからね。


東京二十三区女

東京二十三区女

二十三区全部の話はないよ。主人公の女性が何かに導かれ東京の街をさまよい、そこに東京の歴史に詳しい先輩がついてきて蘊蓄を披露する。渋谷の暗渠、夢の島高島平団地などなど、小説の本筋よりこっちの東京の変遷の話が面白い。


あなたは間違っている   “常識

あなたは間違っている “常識"を疑うための哲学講義

「会社に行くのは当たり前か」、「彼の携帯を見るのはいけないことか」など、当たり前のことをとことん疑って根本から考えてみようと過去の哲学者の思想から紐解く本。この著者の本を過去に読んでいたら内容はそれほど変わらないので読まなくていいかもー 立ち読みできないのがkindleの弱点。


4冊目の著書だが、過去に何度も出てきた著者の宿敵「加奈江」と決着を付ける話。あっという間に読了してしまった薄い本。本の厚さがわからないのもkindleの弱点。


怪談狩り 四季異聞録 (角川ebook)

怪談狩り 四季異聞録 (角川ebook)

新耳袋」の著者による実話怪談集。「新耳袋」や別の人の本でも取り上げられている「山の牧場」の総集編と後日談が巻末に載っている。この話って怖いものは何も出てこないのだが、何の施設かわからないのと、行くたびに様子が変わっているという、怖くないけど不気味な話。ぜひテレビカメラが潜入して欲しい。


ジェリーフィッシュは凍らない

ジェリーフィッシュは凍らない

タイトルのジェリーフィッシュは飛行船。ガスを充填する代わりに真空にすることで浮力を得る。当然、圧力に耐えられる素材が開発されている。その飛行船の新タイプのテスト飛行で乗組員全員が殺される。空中での「そして誰もいなくなった」タイプのミステリーと、後日にそれを捜査する刑事が二つの時間軸で描かれる。アイデアは悪くないのだがもうちょっと努力をすればもっと面白くなるタイプの話。次作に期待。


フォークソングからJ-POPに至る日本の音楽史を、はっぴいえんどYMO小室哲哉中田ヤスタカを中心に解説。Amazonの書評を読むと、この人が語られていないのはおかしいと文句を言ってる人もいるのだが、売れた売れないではなくエポックメイキングになった人だとこのあたりだと思う。近年のアイドルブームはどうなんだと書いている人もいるが、あれは売り方の問題であって音楽とはまったく関係ない。