5月に読んだ本

最近、なんでこんなに本が読めるかというと都営新宿線が悪い。私が帰る時間帯はいつも電車が遅れて超満員。そのため座れるのが2つ手前とか3つ手前なので寝る暇がない。ずっと立っていると本を読むくらいしかすることがない。
     

自殺サイトで仲間を集めて廃病院に来た12人の子ども。準備は万全、計画どおりに死ねるはずだった。ところが自殺をする12個のベッドが置いてある地下室には13人目の死体が...この死体は何なのか、犯人はこの中にいるのか、としたらこのまま自殺を決行して良いのか、12人の議論が始まる。一人一人が病院に着いてからの行動が吟味され徐々に真実に近づいていく。だけど...難しいよ。これこそ映像で見ないとよくわからないよ。


使える哲学

使える哲学

著者は朝鮮を中心とした東アジア思想が専門。何十年も研究をしてこれ以上研究するに値する思想が東アジアにはないという結論に達する。かわいそうすぎる(泣) そして新鮮な目で西洋思想の研究を始める。その結果、西洋人の思考には「向こう側」の世界があることがわかった...学生時代からずっと西洋哲学を研究した人では逆に気づかない視点が面白い。この人、ドイツ哲学をバッサリ切り捨てちゃってるけど、お叱り待ってまーすという感じかな。


論理的思考力を鍛える33の思考実験

論理的思考力を鍛える33の思考実験

以前に思考実験の本を読んで途中で挫折したがこれはすらすら読める。だって3分の1あたりから後ろは数学パズルだろ。タイトルに偽りあり。


本を読む人のための書体入門 (星海社新書)

本を読む人のための書体入門 (星海社新書)

筆者は書体マニア。ここでいう書体とはフォントのこと。ただしDTPの前は活字だったのでそれも含めて書体という表現になっている。書体オタクと書かなかったのが文学および文学史の並々ならぬ造詣がありひたすら頭が下がる。


イヤミス短篇集 (講談社文庫)

イヤミス短篇集 (講談社文庫)

この作家は短編のが面白い。イヤミス度合いが長編だと薄まってしまうのだと思う。とにかく読後感が悪い。イヤミスだもの。


拝み屋備忘録 怪談双子宿 (竹書房文庫)

拝み屋備忘録 怪談双子宿 (竹書房文庫)

私が好きな作家。拝み屋を営んでいる作者が、依頼者の話のなかから実話怪談っぽいのをまとめたもの。先月に読んだ山岳怪談はなぜかアクロバティックな話を狙ってリアリティが薄れてしまったのが残念と書いたが、こちらはちょっとした怪異なので「はあ、そんなこともあるかもねー」と思える。もちろんそのちょっとした怪異をリーダビリティある話にまとめあげる作者の筆力あってのことだが。


青空と逃げる (単行本)

青空と逃げる (単行本)

最近は傑作を連発の作者。期待が大きすぎて過去2作に比べるとラストが物足りなかった。逃避行を続ける母と子。やっとその地で生活の基盤ができて、息子も友人ができたかと思うと追っ手に見つかりまた逃げる。その一つ一つの話がさすがはこの作者、実に読ませる。ただラストが物足りなかったのがある隠し事があり、それをオープンにしていれば後半の逃避行は必要なかったんじゃないのという不満。


なぜ私は左翼と戦うのか

なぜ私は左翼と戦うのか

杉田水脈議員のエッセイ。この人の活動は支持しているが、この本は蓮舫の悪口で一章、立憲民主の悪口で一章が費やされているのがなんとも。


待ってよ

待ってよ

世界的なマジシャンの主人公が呼ばれた山奥の町、ここでは墓場から老人として生まれ、どんどん若返り娘の胎内に帰って行く。以前にビデオの感想であとからあとから設定が出てきて物語として破綻していると書いたが、これはとんでも設定なのだが、この設定だけを決めてあとはその世界観の中でリアリティを追求して物語にしている。ヒロインの娘の話ができすぎているのが難。


大前研一 世界の潮流2018〜19 ―日本と世界の経済・政治・産業

大前研一 世界の潮流2018〜19 ―日本と世界の経済・政治・産業

この本によると日本は平和に静かに衰退し、数十年後はいまのポルトガルやスペインのような国になるであろうと。理由は年金や政府の膨大な債務などつぎの世代に回す負債が大きすぎる、イノベーションが生まれにくい教育制度をはじめとする社会のしくみ、などなど。でも実際にそうなのではないかと私も思う。


合理的なのに愚かな戦略

合理的なのに愚かな戦略

なぜ経営者は愚かな判断をしてしまうのか、豊富な実例と最後は脳科学まで出てくる。後からなら何でも言えるわい、という部分は差し引いても新しい着眼点がいろいろあって面白く読めた。顧客主義、顧客が第一とよく言うが、日本の過去の成功した企業は販売チャネルの構築が巧みだったので、意外に消費者ニーズを捉えてない。計画はデータに基づいて論理的に立てても、決断と実行の段階になると感情が大きく影響を与える、などなど。


47都道府県別の実話怪談を北海道から沖縄まで。それぞれに話の中に出てきた場所や伝説の解説がついていてこっちも面白かった。千葉県は「入らずの森」。これ、いま工事中の市川市役所の向かいだよ。前を何度も通ったけど、あそこはそんなに怖い場所だったのか。