こんな記事があった*1。
「世界で最も貯蓄している国」中韓トップ5入り、日本は50位にも入らず
米国中央情報局(CIA)による「2015年版国内総貯蓄ランキング」で、日本が対象国177カ国中、51位であることが判明した。
シンガポール、中国(ともに2位)、韓国(4位)、台湾(8位)、インドネシア(10位)と、アジア圏からは5カ国もトップ10入りしており、
日本同様、香港(47位)が圏外という結果に。
日本の総貯蓄対国内総生産(GDP)の割合は24.80%と、1位のカタールの半分以下だった。
日本は貯蓄の余裕ナシ? 中国、韓国は貯め姿勢
この統計はGDPに対する各国の総貯蓄(海外貯蓄を除く個人貯蓄、法人貯蓄、政府貯蓄の集計)を割合で表したものだ。
数値が高ければ高いほど、国内の消費率が低く「国の財布のヒモが固い」ということになる。
ランキングを見ると、貯蓄への意識が高い国は発展途上国が多い。経済大国と呼ばれるドイツ(33位)や米国(96位)を始め、カナダ(79位)、
ニュージーランド(97位)、英国(134位)、スイス(141位)などは軒並み「財布のヒモが緩め」。
逆にシンガポールのように政府によって貯蓄が義務つけられている国もある。
総貯蓄が低い国には2パターンあるようだ。一般的に消費率の高さは景気の良さと連動しているため、
総貯蓄率が低い国ほど国民の懐がうるおって消費に走っている、あるいは貯蓄したくても貯蓄するお金がないとも考えられる。
バブル崩壊前の1990年代には個人貯蓄水準の高さで知られていた日本だが、
景気の減退とともに2000年以降は「貯蓄に回す余裕がない」といった声が多く聞かれるようになった。
お隣韓国も景気の上がり下がりに合わせて、貯蓄率も変動している。総貯蓄が50%を超えた10年前にピークを迎えた中国は若干目減りしているが、
まだまだしっかりと貯めの姿勢を維持しているようだ。
この記事は「ZUU online」というサイト、初めて見る。これ、やべえだろ。やべえというのが日本の貯蓄が低いことではない。こんな記事を書くことがだ。誰かが会議でこんなのを出したら キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!! と、ほくそ笑んで指をバキバキ鳴らして質問の時間を待つようなレベル。なにが問題かわかりますか?
この統計はGDPに対する各国の総貯蓄(海外貯蓄を除く個人貯蓄、法人貯蓄、政府貯蓄の集計)を割合で表したものだ
貯蓄には政府の貯蓄も入っている。そりゃ、日本は低くなるよ。政府の天文学的な借金があるもの。むしろそれを差し引いても個人と法人でGDPの25%も残るのがすごい。日本という国全体の貯蓄を見ようという試みは良い。だが、それに対して「景気の減退とともに2000年以降は貯蓄に回す余裕がないといった声が多く聞かれるようになった」とコメントを付けたらダメだろう。現実にそうなのかもしれないが、それの根拠にこの数値は使えない。
もう一つはちょっと強引だが、こういう考え方はできないだろうか。貯蓄/GDPという率について極端な場合を考えて、収入の全額を貯蓄に回すとする。二つの国があって、ともに貯蓄は100万円とする。100万円の収入に対して、この人たちがGDPに寄与している金額が片方は50万円、もう片方は200万円とする。後者の方が生産性が高い立派な国だ。ところがGDPが分母になっているのでこの計算の貯蓄率は前者が200%、後者は50%になる。つまり生産性が高い国ほど率が低くなる。発展途上国が上位にいるのは記事にあるように「貯蓄への意識が高い」ではなくて生産性が低いからではないのか。
こんな記事でもタイトルだけがリツイートされて「アベノミクス失敗」とかコメントが付いて拡散されるのだろうな。このサイトの運営母体はどこなのだろう。