江戸時代ってすごい

画像は「みをつくし料理帳」のラスト近く。客足がぱったり途絶え倒産寸前だった店が、北川景子演じる澪をモデルにした戯作(小説)のおかげで以前にも増して大繁盛する。ああ、よかったよかったというラストだが、よく考えるとすごい。もちろん史実どおりではない脚色はあるだろうが、なにがすごいって、江戸時代の庶民は老いも若きも小説を読めたことだ。この時代にこれだけ識字率が高く、実用的な文章を必要に迫られて読むだけでなく、庶民が文学に触れていたのって世界でも日本だけではないだろうか。
たまたまいま読んでいる本が、いま我々が話したり読んだりしている日本語はいつごろ成立したか。とくに文章はかなり新しい。森鴎外なんかは文語文でかなり読みにくいでしょ。歴史の教科書では二葉亭四迷の言文一致運動とか出てたけど、実際に定着したのは大正時代らしい。つなりこの「みをつくし料理帳」でみんなが読んでいる戯作は話し言葉とはかなり違う、相当に読みにくいものであったはずなのだ。江戸の庶民がライトノベルを読んでいるだけでも驚異である。実際はそれよりはるかに読みにくい、まちがいなく樋口一葉より難しい小説をみんなが買い求めて読んでいたわけだ。そりゃ、開国してまもなく西洋の列強に追いつくはずだと、このラストシーンを見て思った