内容をすっかり忘れちまったぜい。ネット社会とか
原発事故とか現代をどうとらえるかという本だったと思う。覚えていないくらいだからあまりお勧めはできない。
新聞だか雑誌だかの人生相談から始まる連作短編集。これが連作なのかも途中まで読まないとわからない。読み進むうちに時制の違いが明らかになったり、ある人とある人が同一人物だとわかったり。最近の連作短編集ではよく使う手だが、本書はいかにしても複雑すぎる。マ
スターピースがはまるといきなり全体が明らかになるとか、からまった糸の1本を引くと全部がほどけるのが鮮やかな結末だと思うのだが、これは人物の相関図と年表を書きながら読まないとラストが理解できない。私がアホなだけかもしれないが、帯の「二度読み、三度読みは必至」のコピーはちょっと違うと思う。
近所でも評判の仲の良い三姉妹。長女が次女を殺して自首。だが長女は動機を語らない。残された三女は長女の友人知人に姉のことを聞きに行く。やがて明らかになっていく自分が知らなかった姉...かといって姉が実は
マッドサイエンティストだったという話ではない。三女が見ていたしっかり者で優しい姉もそれはそれで正しい。まったく同じ姉の姿が反対から見るとまったく別な人物に見える。着想や話の展開は良いのだが、いくつかの肝心な部分に無理がありすぎるので物語に入り込めない。次回作に期待だ。
この人の作品は久しぶりに読んだが、こんなに上手な人だったっけ。この何年かで円熟の境地に達したんだね。ミステリー短編集。こちらは連作ではなく、話も登場人物もまったく違う。あっと驚く結末というほどではないが十分にひねりが効いたラストが楽しめる。発表した時期も雑誌もまったく違うのだが、なぜか主人公が年老いた母親の介護に頭を悩ませており、かといってそれをテーマにした話でもない。これは作者の実体験なのだろうか。
小説宝石の別冊のSFアンソロ
ジー短編集。先日、SF協会が内紛の記事があって、
SF小説のマーケットがどんどん縮小していると書いてあった。だが私はそうは思わない。むしろこの5年とか10年で豊かな才能の作家がどんどん出てきて、欧米とは異なる日本独自の
SF小説の萌芽を感じている。とくにこの本はすごいよ。
SF小説って3分の2くらいしかなくて、あとはこれをSFのジャンルに入れちゃうの?という話が少なくない。それを許すだけの度量がSFファンにあるのなら、ブームはこないまでも日本のSFはまだまだ行けると思う。
作者は上で紹介した
真梨幸子とともに「
イヤミス(読後感がたまらなくイヤなミステリー)」の旗手。この作品が上手だなと思うのが、スーパー
ナチュラルな話のように見せながらも一定の枠からはみ出さないので最後まで読むと、それはただの味付けで実は超自然的なことなどなにも起こってなかったのではないかと読者に思わせるところだ。淡々と物語が始まるが、最後はテーブルをぜんぶひっくり返して終わるクライブ・パーカーや、風呂敷を広げるだけ広げて畳み方がわからなくなってグダグダで終わるB級ホラー映画と対称的。
クロユリ団地やミスゾンビはこの作品を読んで反省するように。
抜群の安定感の
横綱相撲、ホラーの第一人者による短編集。探偵の話がなかなか味わい深い。この人を主人公にした連作短編集が読みたい。
6月は短編集ばかりだったな。オチがまったく予想できないミステリー短編集。それでいながら小説としての完成度が極めて高い。今年の
芥川賞はこの人でいいだろう。
いま我々が目にしている書き言葉はいつごろに成立したかを膨大なデータから調査。末尾の「です」は、もともとは江戸の身分が高くない町民が使う言葉だと知ってびっくり。残念なのが作者が
言語学者なので、この本で述べられている言葉の変化を生じさせる時代背景とか時代の要請に触れられてない。それを合わせて読めるともっと面白い本になったと思う。
最近よくテレビに出ているハゲのおっさんの
ショートショート。最後の1行にオチがあり、最後のページをめくると先頭にその1行があるという凝った作り。だがそこまで行かなくてもオチが想像できるので、むしろ最後の1行を省いた方が深みが出るように思った。