ゴールデンウィーク特別企画「国語 文体の研究」(前編)

はじめに言っておくが、今回は良い悪いという話ではないから、それぞれのファンの人は過剰に反応しないように。アクティブな前歯もパッシブな胸もぜんぶひっくるめて愛するのがファンと言うものだ。
テキストAからDまで、すべてセーラー戦士のブログから抜き出したものなんだが、それぞれ誰のかわかるかな。まずはテキストA。いきなり小松彩夏ではないとわかるね。

 【テキストA】

  本当にいいですよ、ピクニック!

  買ってきたご飯とかではなく、手作りお弁当っていうのがポイント!!

  公園で食べるお弁当が、美味しいのなんのって(´∀`)

  みなさんも、土日や祝日など、お天気がいい日はぜひ!のんびりピクニックでもしてみてはいかがですかっ♪

  あ、GWなんかいいんじゃないですかね(・o・)!

  かなりオススメです(*^▽^*)

つづいてテキストB。慣れるとこれがいちばんわかりやすい。

 【テキストB】

  髪がキレイだと気分が上がりますよね♪

  なるべくサロンに行くようにしてケアはしているんですけど、

  髪が長いのでどうしてもすぐに痛んじゃうんですよね(x_x;)…

  髪が最高のアクセサリーと言えるくらいにこれからもケアを頑張りたいです-(´∀`)

つぎがテキストC。これとテキストBの違いがきょうの話のテーマだ。

 【テキストC】

  ケアベアのタオル地のワンピースを頂いちゃいました(*´▽`*)

  カワイイ〜☆

  お風呂あがりはコレがすっごく便利なんです!!

  夏場はパジャマとしてそのまま寝ます!!

  海やプールに行くときも便利なので、これからの季節は大活躍しそうです(^O^☆)

最後がテキストD。これは文体以前に内容から一発でわかるね。

 【テキストD】

  セットも順調に撮り進んで、あと3日ほどでクランクアップです。

  ドラマの時は特に感じることですが、インしてからは本当に早いです。

  いつも必死にやっているうちに気付けば終盤にさしかかっています。

  作品には恵まれて来たので周りからは順風満帆のように思われることが多いですが、

  実際は力が追いつかなくて自分の中では毎回必死でもがきながらやっているので

  作品に入る前も、入ってからも、撮影が終わってからも、

  初日の舞台挨拶をして皆さんの手に作品が渡るまで、結構悩み苦しんでいます。

上から順に、A:安座間美優、B:泉里香、C:小松彩夏、D:北川景子沢井美優を抜かしたのは、最近の日記があまりに作りすぎていて文体が見えないのが理由。手袋をしたまま手相は見られない。
泉里香のブログが始まったとき、なんてまろやかな文章なんだろうと思った。以前に小松彩夏のブログを取り上げて、非常に鋭利な文章であると書いたことがあった。この差はどこから来るのだろうと考えていたのだが、華子様のイマドキを見ていたら、まろやかを通り越して人を脱力させる文章に巡り会った。

  季節の変わり目はお肌のケアが大切ですよ。

  このツブツブはマグマからできているんですって。すごいですね〜

  泡がきめ細かくてすごく弾力がありますよ。

  砂糖のツブツブの刺激が気持ちいいですね〜

  これからの季節は肌の露出*1が多くなるのでボディケアも大切ですよ〜

もちろん、この文章を考えたのは華子様ではなくてライターなのだが、ぜんぶの文の語尾が「です」や「ます」で終わっていない。「です」や「ます」が持っている、物事を断定する強さを、「ですよ」や「ますよ」にして弱めているわけだ。さらに「気持ちがいいです」を「気持ちがいいですよ〜」と語尾を伸ばすと、気持ちがいいと感じた華子様の意志よりも、それを視聴者に伝えるという行為に比重が移り、さらに文の断定力が弱まっていく。簡単な例をあげると

  1.あしたは雨です

  2.あしたは雨が降ります

  3.あしたは雨ですよ〜

  4.あしたは雨が降りますよ〜

1の「です」は強い。自分の責任において明日の天気を断定している。その根拠を聞くことなんか許さない雰囲気がある。語尾を「ます」にするには少し文を作り替えなければならない。こうすると文の強度が少し下がる。この人が天気を予想した背景が裏にあるのが感じられる。3や4になると、雨と断定したことより、それを教えてくれたこの人の好意に気持ちが動く。
これを前提に泉里香のテキストBを見直してみよう。これを「です・ます」で書き改めると

 【テキストB'】

  髪がキレイだと気分が上がります♪

  なるべくサロンに行くようにしてケアはしてますけど、

  髪が長いのでどうしてもすぐに痛んじゃうんです(x_x;)…

  髪が最高のアクセサリーと言えるくらいにこれからもケアを頑張ります-(´∀`)

かなり文章が強くなる。自覚的か無自覚的かはわからないが、泉里香はこの強さを嫌ってすべて語尾をボカしているのだ。
ではテキストDの北川景子はどうだろう。彼女は完全な「です・ます調」だが、むしろ小松彩夏の文章より弱い。この違いは文章の長さだ。

  北川:ドラマの時は特に感じることですが(↑)、インしてからは本当に早いです(↓)

  小松:お風呂あがりはコレがすっごく便利なんです(↑)

文章が長いと語尾の効果が薄まる。また文が長いとリズムが生まれるので、大きくうねりながら語尾の「です」に向かう北川景子と、「です」に乗せて文が矢のように飛んでくる小松彩夏の差がある。
これが安座間美優クラスの達人になると、体言止めや紋切り型を混ぜながら文末にバリエーションを付けている。語尾だけ抜き出すと、

  ・・・ピクニック!

  ・・・ポイント!!

  ・・・なんのって

  ・・・いかがですかっ

  ・・・ですかね

  ・・・オススメです

そして、最後の「オススメです」がこの文章全体での安座間美優の主張となって光るわけだ。4人の文体がわかると、小松彩夏のキツイ文章を、ほかの3人の文体で書き直したらどうなるかやってみたくなるではないか*2
(つづく)

*1:「ろしゅつ」が「るしゅつ」になってる。「お」列全般が苦手

*2:ほんとにヒマなんだなあ