「自分の身体で実験したい」(後編)

前編のあらすじ。

  リーダーとして早く目覚めなければと焦るレイは、

  必死で自分に欠けているものを見つけ出そうとする。

  そんな時、セーラーヴィーナス愛野美奈子の企みで、

  レイは病院の子供達の前で歌を歌わなければならなくなってしまった。

  歌は大の苦手。困ったレイがとった行動は・・・

うそうそ、前編はここね*1。前編と後編が1年あいたよ。私がこの本でいちばん面白かったのがホールデーン親子。20世紀の初頭を生きた人で、父のジョンは呼吸の研究をする科学者。いろいろな気体を吸ってみた。窒素、酸素、二酸化炭素一酸化炭素、ヘリウム、アルゴン、塩素ガス・・・さらに塩酸を飲んだり、潜水病、熱射病、いろいろなものになってみた。我々が知ってるこれらの知識はすべてこの親子が自分の身体を使って実験をしてくれたからだ。
自分の父親がこんなことをしていたらほとんどの子どもは非行に走るだろうが、息子のジャック君は父親を尊敬していた。その父の研究を手伝うためになんと4才から研究を手伝い始める。研究を手伝うというと聞こえはいいが、要するに悪い空気を吸うことだ。てか、お母さんはやめさせろよ。べつにこの親子は金に困ってこんなことをしていたわけではないのだよ。ただただ己の探求心。このホールデーン家はスコットランドで数百年続く古い家系で、代々、困難に負けない強さを重んじる。なにしろホールデーン家の家訓が

  耐えよ

だ。よかった、こんな家に生まれなくて。
たとえば悪い空気を調べるために木の箱に8時間も閉じこもってみる。嘔吐し頭痛に苦しみときおり気絶する。だが、この実験の結果、問題は酸素がないことではなく二酸化炭素が溜まることにあるのをつきとめる。この発見で炭坑や潜水艦で長く快適に過ごせるようになったわけだ。一酸化炭素なんかも実験で13回も吸っている。とくに一酸化炭素がヤバいのが炭坑。炭鉱内の爆発で死者が出ても、それまでは爆発によるものか、火が酸素を使い果たして窒息したのか、有毒ガスによるものかわからなかった。この親子の調査で要因を分析して改善策を提案し、多くの労働者の命が救われた。炭坑を訪れるとたびたび一酸化炭素中毒になった。家で心配する家族に「みな無事」と電報が届く。それを見て安心するのだが、同じ電報が何度も届くので(打ったことを思い出せなくなっている)また心配する。
この親子、晩年は後遺症が出てきたものの、父は75才、息子は72才と、当時としては長生きで病に倒れる間際まで元気に研究を続けた。いや、いろんなものを吸い続けた。我々が安心して地下鉄に乗れるのなんかも、この親子の研究のおかげである

・・・
夏の疲れで、いや、この1か月ずっと躁状態のハイテンションで毎日ブログを書き続けて、ふと気がつくと気力を使い果たしている自分がいたんですけど。正確には

  妄想力*2

が枯渇してしまったんですけど。今週はちょっとペースダウンしようかななんて

*1:http://d.hatena.ne.jp/M14/20070919

*2:そもそも私の年代の人には不要な力だからね