MM9

この小説の舞台は日本。時代は現代。いまの日本とただ一つ違う点は怪獣が来ること。身長40〜50m、体重数万トンの怪獣が海の向こうから日本にやってくる。科学読み物で指摘されているように地球上に存在する物質ではこのような大きな生物は存在しえない。その部分については物語の中でも謎とされている。「多重人間原理」という屁理屈で、量子論的な並行世界(この本では「神話宇宙」)からやってきて地上を暴れ回るのだが、その怪獣が死ぬと我々が住む世界に固定されるらしい。
この小説、怪獣が出る以外はいまの日本と変わりはない。だから科学特捜隊もウルトラ警備隊もいない。よって、ジェットビートルもウルトラホークも存在しない。当然、ウルトラマンウルトラセブンも助けてくれない。怪獣が出現したとき、気象庁の係官が現地に赴き観測をする。表題の「MM9」とは「モンスター・マグニチュード9」。怪獣の大きさによって被害予測をした数値である。怪獣の進路を割り出し、日本に上陸するようなら予報や避難命令を出すのが気象庁の仕事だ。当然、海上で怪獣を迎え撃ち上陸を防ぐ任務が自衛隊。そうだよな、台風みたいなもんだから、進路予想は気象庁の仕事か。この変なリアリティだけで私はこの本を買ってしまった。
読んでみたら「ウルトラQ」のノリで思ったより軽かったのが残念。最終話では日本書紀に出てくる怪物が出てきて、この世界の構造が明らかにされる。ふむふむなるほどと感心したらウルトラマンの代わりに別のものが出てきてその怪物と戦っておいおい。細部をこだわらない人の暇つぶしにはおすすめの本だ