謝罪文の補助線

算数や数学の図形の問題で補助線を引くという解法があったでしょ。幾何でのあの発見的手法が嫌いだったのだよ。

   

上の図でxを求めるのに青い補助線を引くと◯と⚫の角度が現れるやつな。最近、謝罪の言葉でなにかしっくり来ないというか、これって謝罪になっているのか疑問に思った文章があった。これも同じように補助線を引くと文意がわかると思ったのだよ。ここで言う補助線とは線を引くことではなくて、言外の意味を言内にする、行間の意味を行にする、コンテキストをテキストにする、つまり一文を加えるわけだ。ではさっそくやってみよう。

◆大学教授編

www.itmedia.co.jp

(問題の発言)
月当たり残業時間が100時間を超えたぐらいで過労死するのは情けない。自分が請け負った仕事をプロとして完遂するという強い意識があれば残業時間など関係ない。さらにプロ意識があれば、人的資源を獲得すべく最大の努力をすべき。それでもだめなら転職を考えるべき

この先生のように自分の意志で仕事を選んだり人を集めたり計画を立てることができる人なら大きく間違ってないが、そのどれもできる立場に無い人がいることをわかってない。

(謝罪)
私のコメントで皆様に不快な思いをさせてしまい申しわけございませんでした

来た来た。よくあるパターン。では補助線を引いてみよう。

(謝罪文の補助線)
(私の主張は正しいし、訂正する必要も無いが)私のコメントで皆様に不快な思いをさせてしまい申しわけございませんでした

主張が間違っていたとか、いろいろな立場の人がいることに考えが及ばなかったので上述のような発言をしてしまったという謝罪ではない。自分の正しいコメントを聞いて不快に思った人が多いようなので謝ると言っている。つまり言い間違いとかうっかりさんではなく、これがこの人の思想なのだと補強をしてしまっている。学生が気の毒だ。

◆市長編

www.sut-tv.com

(問題の発言)
実は静岡県、県庁というのは別の言葉でいうとシンクタンクです。毎日、毎日、野菜を売ったり、あるいは牛の世話をしたりとか、あるいはモノを作ったりとかということと違って、基本的に皆様方は頭脳・知性の高い方たちです。ですから、それを磨く必要がありますね

解説をする必要もないほどアホな発言だ。外国人が食べるとびっくりする甘い果物や、日本でしか作れない素材を作るのにどれだけの頭脳と知性が必要かと。

(謝罪)
職業差別ととらえかねない表現だとなり、また職業差別であると理解している人が急速に増えてきた。そういう理解をしてもらうのは本意ではない。職業差別ととらえた方がいて、不愉快な思いをさせたことを申し訳なく思う

この人の不幸はまわりに意見をする人が誰もいないことなんだろうな。そういう人は遠ざけられているか。私がいた会社で役員まで出世した人って、自分のそばに堂々と反対意見を言う人を置いておいたよ。そういう人材って自動車の安全装備みたいなものだろう。

(謝罪文の補助線)
(私の発言のどこが職業差別なのかはわからないが)職業差別ととらえかねない表現だとなり、また職業差別であると理解している(バカな)人が急速に増えてきた。そういう理解をしてもらうのは本意ではない。職業差別ととらえた方がいて、(発言には何の問題もないものの)不愉快な思いをさせたことを申し訳なく思う

アホだな。「手足を動かすのではなく頭を使えと言いたかったが、それを説明するのに誤った言い方をしてしまった」と言えばいいのにあくまでも自説は曲げない人。

◆国会議員編

www.47news.jp

航空機の中でこの人が職員に怒鳴りつけているのが不快だったと芸能人が投稿して話題になった議員だよね。この記事は道庁職員へのパワハラが週刊誌に書かれたことへの会見だ。そもそも三権分立だから立法府の議員は行政府に命令する立場にないのだよね。

(謝罪)
正しいことをストレートに発言するところを取りえだと思っていた。ストレートすぎるところは十分にあったのではないか

こういう人はあちこちにいるよね。これは絶対に反省しないし直らないパターン。たぶん何が悪いのかわからないと思う。

(謝罪文の補助線)
(自分の中での)正しいことを(自分の怒りの感情のままに、すなわち)ストレートに発言するところを取りえだと思っていた。(感情のまま)ストレートすぎるところは十分にあったのではないか

「正しさ」とは人の数だけ正しさがあることがわかってない。つまり自分の正しさとは相手の正しさとは限らないという謙虚な気持ちが無いんだよね。そして正義の御旗があればどんな表現でも、つまり怒鳴ったり恫喝するのも許されると思っているのがこの人のヤバいところ。ハマスにもロシアにもかってのオームにも彼らの正義があるのだから、自分が正しいと思うことなら表現は問われないならどんなテロ行為も許されてしまう。「秋元克広市長は同月の記者会見で『かなりきつい調子で言われる方』と言及した」ではなくて、正式に抗議をして職員を守れよ。