残暑の映画まつり「Daughters(ドーターズ)」

   f:id:M14:20200919010651j:plain

阿部純子が主役の一人なので前々からチェックはしていたが山手線の内側は渋谷の1館だけかーい。長編映画は本作が初めての監督で、イベントの演出や映像作家をしている人らしい。なるほど、映画の合間合間にIVっぽいおしゃれな映像が差し込まれている。このパターンは監督の自己満足で終わってしまい、映画としてはイマイチなことが多いが、主役である三吉彩花阿部純子の堅実な演技でガチな映画作品になっていた。沢井美優に似ている三吉彩花は、過去に見た「ダンス・ウィズ・ミー」や「犬鳴村」より本作が良かったなあ。高校以来の友人の二人、いまはそれぞれ別の都内にある会社の中堅社員で、中目黒でルームシェアをしている。仕事も遊びもちゃんとして自由な生活を楽しんでいたが、阿部純子が妊娠、一人で産んで育てると言う。そこから二人の生活が一変する...意地っ張りだが不安でいっぱいの阿部純子は彼女の得意な役。同居する友人から事実を告げられると、「一人で育てるなんて無理だよ」と言いながらも決心が固いと知るや、自分は生まれてくる子どものパパ役になって母親を助けようと覚悟を決める三吉彩花がすごくいい。二人で産婦人科に行って先生の話を聞き、講習会もいっしょに出る。それって、友情とか奉仕の精神ではなく、ある日突然、なにかの立場になってしまったら、よけいなことを考えないで、肩肘を張らずにそれを淡々と遂行する。その、人としての正しさが三吉彩花から伝わってきてすごく良い配役。この手の話のクライマックスってふつうは出産の前後なのに、妊娠8か月のつぎがいきなり生後5か月まで飛ぶ。監督が表現したかったのは出産ではないのも新鮮。ただ、二人の心情をもっと突っ込めば深い話になったように思うが、あっさりしすぎているのは好みが分かれるところだと思う。