春の映画まつり「劇場版 TOKYO MER 走る緊急救命室」「聖地には蜘蛛が巣を張る」

どうせ行くならTOKYOMERのほかにもう1本観ようと思っていたのだが、どの映画館もコナン、東京リベンジャーズ、マリオ、聖闘士星矢で占拠されていて、そのほかの映画は前日で終了か、上映していても朝か夜。第4候補くらいの作品が日比谷なら観られるってことで行ってきた。

   

満足する食事って二通りあると思うんだ。一つは何で出しを取ったかわからないくらい複雑で奥行きのある味とか、良い食材を絶妙な調理法で仕上げている料理。まあ、あたりまえだよね。もう一つはホテルの朝食バイキング。一つ一つは高級食材ではないのだが、品数が多くて朝食に食べたいご飯のお供がそろっている。蕎麦とカレーまであったらもう最高。かといってステーキ、うなぎ、天ぷらは朝から要らない。この映画は典型的な後者、そして後者を極めるとこうなるという映画。考えてみればドラマの劇場版って、べつに劇場で観る必要がない作品がほとんど。さらに映画用に豪華なゲストを出すとレギュラーの存在感が薄くなって改悪になってしまったり。その点、MERはバスの爆発が旅客機の爆発になって、雑居ビルの火災が横浜ランドマークタワーの火災になって、予算の分だけスケールアップできる。脚本もよくできていて、孤軍奮闘する誰かがピンチのときに仲間が助けにくるのは胸熱だが、それが何度も起きるような展開になっているのが技あり。ドラマを見ていた人は必見、見ていなかった人でも楽しめる。先日放送されたスペシャルドラマを見ていると、組織が変わっていなくなっていた人が映画では最後にちょっと出てきて、これも上手。

   

舞台はイラン。イランの聖地マシュハドで娼婦を狙った連続殺人事件が起こる。主人公はこの事件を取材するジャーナリストの女性。被害者が10人を超えているが、殺されているには娼婦だけだからと警察も本腰を入れているように見えず、犯人を英雄視している市民も多い。その間にも犠牲者は増え、主人公が目撃者を探そうとしても協力してくれる人がいない。ついに自分を囮にして犯人に近づく主人公...主人公目線と犯人目線が同時に描かれるので犯人は最初からわかっている。ミステリー映画だと犯人が逮捕されたら後はエピローグだが、この映画はそこから第二部って感じで、むしろ映画の主題は第二部にある。舞台も出演者もイランだが、映画自体はデンマーク・ドイツ・スウェーデン・フランスの合作。じつはイラン国内では撮影の許可が降りず、ヨルダンで撮影されたそうだ。