狂気の都営新宿線

ミッドナイト・ミート・トレイン (字幕版)

いや、ここまでひどくはないけどな。これだったら私は生きてない。昨日の帰りのこと。少しずつ帰社時間を遅くして、それでも定時の15分前に帰っている最近の私。電車はけっこう混んでいるが、なんとかつり革につかまれるくらい。みんな疲れ果てて静かな車内で男の声が聞こえる。

   「つぎで降りるから道をあけろよ」

   「あけないと刺しちゃうよ」

   「この距離だと逃げられないよ」

   「本当に刺すよ」

   「刺すからね」

 これ、動画を撮影すれば十分に脅迫罪が立件できるレベルではないか? 結局、駅についたらその男の前の人も降りるので男はそのまま降りていき被害者はいなかった。酔っ払って呂律が回らない喋り方でもかく、ごく普通に話しているのが不気味だった。

駅についてスーパーで買い物。どのレジもけっこう並んでいる。向こうの方ででかい声を出している男がいる。レジの店員どうしが「酔っ払いが騒いでいるのよ。警察を呼ぶみたい」。迷惑だ。こいつと、さっきの刺殺魔を対決させたかった。金を払ってレジを抜けると、その男が袋詰めをしていた。あいかわらずでかい声で呪いの言葉を吐いている。早く店を出よう、と思ったら...青年がその酔っ払いをスマホで撮影している。なんだ、こいつは。YouTubeにアップするのか。酔っ払いは自分が撮影されているのに気がついた。バトルが始まるぞ、と思ったら酔っ払いはスマホを出してその青年を撮影し出した。目には目を、動画には動画を。だが、この青年は自分を撮影している人を撮影しているだけだから、この動画ではアクセス数が期待できないぞ。そのうち酔っ払いがその青年につかみかかって酔っ払いが「よせよ」、青年が「触るなよ、この動画を警察に見せるから交番に行こうぜ」と小競り合い。私は店を出てしまったのでその後どうなったかわからない。だが、お互いを撮影しあう酔っ払いと青年、その両方を私が撮影したらけっこう面白かったのではないか。だが二人から攻撃されたら勝てないし、この足では走って逃げることもできない。世の中には迷惑なやつが多いという話。