11月に読んだ本

光 (集英社文庫)

光 (集英社文庫)

表紙を見ないで読んだら絶対に天童荒太の作品だと思うだろうな。


懲戒の部屋―自選ホラー傑作集〈1〉 (新潮文庫)

懲戒の部屋―自選ホラー傑作集〈1〉 (新潮文庫)

この人はホラー系の作品も書いていて「件(くだん)の母」は傑作。この短編集は怖さのベクトルがちょっと違っていて、変な駅員にからまれるとか、痴漢にまちがえられるとか、奇病にかかるとか。たしかに怖い。


ドラゴンフライ

ドラゴンフライ

3人の幼なじみが成長して故郷の村がダムの底に沈んだときに起こる事件。無理な設定が多いものの読者を驚かそうという作者の心意気を買う。


化身

化身

ホラー小説大賞受賞の短編集。表題作はジャングル版カフカの「変身」だが、変身後の姿に馴染んじゃってるし。どれも発想がなかなか。


成長のない社会で、わたしたちはいかに生きていくべきなのか (一般書)

成長のない社会で、わたしたちはいかに生きていくべきなのか (一般書)

学者と記者による資本主義に関する対談集。この本に限らず資本主義を語った本が共通して言ってることは「この先、成長があると思うな」。それを前提に社会の仕組みを再構築せよと。


十一月に死んだ悪魔

十一月に死んだ悪魔

交通事故のためにところどころ記憶が飛んでいる中年の主人公は、ふとしたきっかけで若い女性と暮らすことになる。記憶の断片が戻り事実が明らかになるたびに物語が二転三転していく。この記憶喪失ネタはラドラムの「暗殺者」という不朽の名作があるが、これはそれのイヤミス(読後感の悪いイヤな話)版。


去年の冬、きみと別れ

去年の冬、きみと別れ

今年の私のベスト本、第2位はこれだ。単純な事件に見えて何度も様相がひっくり返る。途中で挿入される手紙やなにかの記述、これは誰が書いたものなのか。ラストですべてが明らかになると最初の事件がまったく違う形に。本格ミステリの文法からすると後出しの手がかりがあるが、そもそも作者はミステリー作家ではないしミステリーとして書かれた作品でもない。それでも今年のベストミステリーに揚げたい。


kindleで妙に安かったから買って見たホラー。値段分の読み応えしかなかったよ。まんま「クロユリ団地」。こっちを原作にすればもうちょっとなんとかなったのに。


子どもの難問

子どもの難問

「幸せってなに?」「死んだらどうなるの?」子どもの質問に哲学者が答えるという異色のQ&A。言葉はやさしいが内容は深い。どの回答者も子どもを見下ろしてないのが良い。あくまで暖かい言葉で、けれど中身は妥協していない。これは今年のノンフィクション部門の1位かな。


私の家では何も起こらない (幽BOOKS)

私の家では何も起こらない (幽BOOKS)

恩田陸のホラー連作集。主がたびたび変わる丘の上の一軒家の出来事。さすが恩田陸、なみのホラーとひと味違う。それぞれの話が一人称で書かれているが、そもそもこれを書いているのは誰なのか。それをオチに持ってくるのが作者のアイデアと筆力。


どこかの国で教鞭を取っている先生の本。子どもに考えさせる授業の進め方の本だが、大人でも役に立つ。もう内容は忘れちゃったけど。


ウラからのぞけばオモテが見える (佐藤オオキ/nendo・10の思考法と行動術)

ウラからのぞけばオモテが見える (佐藤オオキ/nendo・10の思考法と行動術)

世界的に有名な工業デザイナーの人の発想法。その発想法自体はアイデアの出し方として当たり前のことなんだけど、この人の作品の写真を見るとうーんと唸る。こういう知性がこの国にあるということがうれしくなる一冊。