11月に読んだ本

ずうのめ人形

ずうのめ人形

ホラー仕立てのミステリーというかミステリー仕立てのホラーというか。作者不詳の原稿と、その回りで起こる怪異と犠牲者。原稿に書かれたストーリーと、その謎を解く主人公の二本立てで物語が進行する。前半の印象に比べラストが軽いのが難点。


学校では教えてくれない地政学の授業

学校では教えてくれない地政学の授業

ラジオ番組の書籍化らしい。話しては予備校の先生、聞き手はアナウンサーで、「地政学」の観点から現代の国際情勢を読み解く。非常にわかりやすい本で高校生にも読んで欲しい。結局、ユーラシア大陸で起こることはヨーロッパにしろ日本にしろロシアの脅威がバックボーンにあると。お勧めの一冊。


私が失敗した理由は

私が失敗した理由は

「私が失敗した理由」をテーマに本を書くため失敗した人の話を聞きに行く...この人が主人公だなと思うと死んじゃって別の人にバトンタッチ。前の方でインタビューを受けていた人の視点でつぎの話が進んだり、一本の長編かと思ったら連作短編集と呼んでもいい構成。この作者の過去の作品のように話をわからなくするためだけに視点や時制を変えることはなくなって、もう少しがんばると一皮むけそうな人。


反社会品

反社会品

読んだことはないが、この作者の医学関係の長編ミステリーを本屋でよく見かける。その作者のミステリー短編集。これを読むと、短編には短編の難しさがあるのだなと痛感。この作者、短編は苦手というか初心者なのではないだろうか。短編小説の構成というか作法というか、それをもっと研究した方がいい。


ワンフレーズ論理思考

ワンフレーズ論理思考

ロジカルシンキング」の日本で最初の訳本を読んだのが20年くらい前かな。感想は「こんなのあたりまえじゃん」と思ったが、この本は日本語の接続詞をキーワードにして、そこから議論を深めたり、相手に反論しようというもの。前半はとくに興味をそそることなく流し読みをしたが、後半は「おっ」と思う内容で思わず居住まいを正したりして。たとえば、一般論で攻めてくる相手に対しては「それはあくまでも〜の場合ですよね」と、相手の一般論が成立する範囲を限定してしまう。なるほど。あるいは相手がぶつけてきた反論に、さらに反論するとき。「もちろん〜です。だからといって〜と思うんです」または「たしかに〜です。とはいえ〜ではないでしょうか」。このあたりは使えそうでしょ。


テレビでおなじみの池上さんが現代人必須の7科目の教養として「宗教」「宇宙」「人類」「病気」「経済学」「歴史」「日本と日本人」について解説。わかりやすい、実にわかりやすい。サラリーマンだけでなく大学生あるいは高校生にだって読んで欲しい。旧約聖書ユダヤ教イスラム教は同じ神様だって初めて知ったよ。これは私の解釈だが、ユダヤ教を「MS-DOS」とすればキリスト教は「初期Windows」、イスラム教は「Windows NT」、仏教は「UNIX」ではないかと。


彼女がエスパーだったころ

彼女がエスパーだったころ

科学では捉えきれない「超常現象」をテーマにした短編集。超能力のようにけっこう突っ込んだ内容のものから、軽い内容のものまでいろいろ。どれもうら寂しい独特の読後感。


拝み屋怪談 禁忌を書く (角川ホラー文庫)

拝み屋怪談 禁忌を書く (角川ホラー文庫)

いやはや、この人はすごい。なにより文章がうまい。実話怪談の語りのツボもしっかり押さえている。さらに「花嫁の家」は、なんと長編。ホラーの長編というのは難しい。とくに実話系はワンアイデアなのでそれを長くしても話が持たないし、数を増やせばただの短編集になってしまう。ミステリーや伝奇小説にすると実話怪談とは別の才能が必要になってくる。この話は前半は短い実話怪談が続く。ところがそれぞれの話が共通の地域だったり、話に共通点があったり。この話を作者に持ち込んだ7人はすべて血がつながっていることがわかり作者の調査が始まる。三津田真三や小野不由美に同じテイストの長編があるが、これは分量で圧倒する。だけどこの人はあくまでも拝み屋で、小説家では無いんだよね。