母に捧げるタッキー

母に捧げるバラード (Live)

母に捧げるバラード (Live)

元日に89才の母が急死した。2日に兄弟で母の家に集まるのが恒例の行事になっていて、私より少しだけ早く着いた弟がドアを開けたら、廊下に母が倒れていて冷たくなっていた。31日はヘルパーさんが来ていて、弟も電話で話をしている。1日は電話がつながらなかった。すると31日の夜から1日の朝にかけてのことだ。もしも、転んで動けなくなりそのまま丸1日とか2日間、廊下に倒れていて凍死をしたなら母が哀れすぎる。警察の検死では頭を打った痕跡はなし、凍死の痕跡もなし、突然に心臓が止まったという所見だった。たしかに心臓が悪かった。私も弟も母を失った悲しみより、もっと何かができたんじゃないか、そうすれば正月を迎えられたんじゃないか、いろいろな後悔でものすごくへこんだ。看護師をやっている娘にそのことを言ったら「高齢者は電池が切れたみたいに突然死ぬんだよ。だからいろいろ考えてもしかたないよ。誰かが見ているときに発作が起きて救急車を呼んだら心臓マッサージや人工呼吸器で蘇生をさせるでしょ。それで元通りにならなかったら天寿を引き延ばしているだけなんだよね。お婆ちゃん、自分が死んだのさえわからないような死に方ができて、むしろ幸せな最期だったんじゃないかな」。こ、こいつ、ブラックジャックやドクターXと真逆のことを言ってるが、高齢者医療に携わっている者のリアルな意見なんだろうな。
母はタッキーが好きで、彼が主演の「こどもつかい」のDVDを弟が母にあげたんだ。母は喜んで「正月にゆっくり見る」と言ってたんだよね。警察が遺体を引き取って葬儀屋と打ち合わせをしてちょっと落ち着いたとき、私がテレビの横にそのDVDのパッケージが置いてあるのを発見して「これ...」と言ったら弟が「見られなかったじゃないか...」と号泣。コメダコーヒーに行ってあずきトーストを食べるのも楽しみにしていたけど足が悪くなって行けなかった。あのときなんで車椅子を借りて連れて行かなかったオレ。老人には「そのうち」とか「いつか」は無い。みなさんもご両親にしてあげたいことがあったら、いますぐしてさしあげよ。