8月に読んだ本

著者はあの金田一先生の孫。金田一少年ではないよ。名探偵・金田一耕助のモデルになった金田一京助の子どもの春彦の子ども。三代続けて日本語学者ってすげえ。自分がそれなりの年令だから、佐藤浩市の子どもが役者になったら三代目になるわけだろ。宇多田ヒカルとか神田沙也加の娘が歌手になるとかな。歌舞伎は別にして三代続けて一流の芸能人っていたっけ? 三代目の金田一先生のこの本だが、内容は期待外れだった。このテーマなら、校閲者、マニュアルを書いているテクニカルライター、映画の字幕を書いている人あたりを入れると日本語に対するまったく別のこだわりが聞けたように思う。


ハチャメチャながらしっかりしたストーリーと意外と爽やかな読後感、クズながら魅力的な人物造形はあいかわらず。直木賞吉川英治文学賞を授与されることは一生ない、内容がエグすぎて映画化されることもないだろうがたいへんな力量を持った作家だと思う。本作はグロさは控えめで、そっち系が好きな人はちょっと物足りないかな。


ダメな議論―論理思考で見抜く (ちくま新書)

ダメな議論―論理思考で見抜く (ちくま新書)

なかなかの良書。社内の会議やテレビに出てくる自称評論家の論説で、どこか違うぞと思いながらも論理立てた反論がすぐに思いつかないときってあるでしょ。この本は「定義の誤解・失敗」、「無内容または反証不可能な言説」、「難解な理論の不安定な結論」、「単純すぎるデータ観察」、「比喩と例話に支えられた主張」という5つのチェックポイントをあげて解説してある。他者への反論だけでなく、自分がこのような論説に陥らないようにする示唆に富んだ本。おすすめです。


超自然な話もあるのだが、ふつうではない人が起こす怖い出来事の話が多い。一つの話が見開き2ページ、全部で100話の薄い本なのだが意外に読み出がある。実話怪談系は一文ごとに改行して行間が多く取ってあるのが特徴だが、この本は余分な改行なしでぎっしり詰まっているからだな。


天才児のための論理思考入門

天才児のための論理思考入門

子どもが発する疑問や質問に対して必要最小限の答えを掲げた後で、子どもの思考力をもっと深めるような回答を示す。と言ってもよくわからないか。本に出ていた質問と回答を一つでもここに書けばわかるのだが、もう捨てちゃったので書けない。タイトルと内容はまったく違うよ。天才児に限定する必要はまったくなく、子どもの質問だけでなく、ふだんから物事をこうやって考えようという本。


アテンション

アテンション

うたい文句に騙された。そもそもこの本は体裁が最悪。大きめだが線が細いフォントで、行間が極端に狭い。これならもっと小さいフォントで行間を空けて二段組みにした方が読みやすい。それがやりにくいほど図やグラフが多いわけでもない。なんでこんなレイアウトにしたのか? 本を厚くしたかったのかな。


赫眼 (光文社文庫)

赫眼 (光文社文庫)

原作は良かったのに脚本と主演女優が良くなかった映画「のぞきめ」の作者の短編集。むしろこっちのが映像化に向いていると思う。一つの話を20分くらいにまとめてそれを4本。最後に映画オリジナルで4つの話を統合するようなラストを加えたらかなりいい。Ακβは絶対にやめてくれ。芳根京子平祐奈森川葵、大友花恋なら絶対に観に行く。


ミネルヴァの報復 (ミステリー・リーグ)

ミネルヴァの報復 (ミステリー・リーグ)

派手さはないが外れがない作者。この人は弁護士だったが60才で仕事を辞めて作家に転向したそうだ。私にはそんな力も、蓄財も無い。主人公が怪しいと思った人物が殺されて事件の様相が二転三転する。だが登場人物が少ないので容疑者が死ぬと消去法で意外な犯人がわかってしまうのが弱点。


冥の水底

冥の水底

新刊で出たときから知っている本だったが、なにしろ5cmくらいあるので買うのをビビっていた。偶然に古本屋で見つけて買って読んだが、これは新刊で買う価値あり。長さをまったく感じさせない手塚治虫の「バンパイヤ」の朱川版。内容は突拍子もないことなのだが、この作者らしいノスタルジーと静かな悲しみが漂い、悲劇のラストに向かっていく。