北川景子「家売るオンナ」

私が3話、4話、そして先週の8話の監督が嫌いなのが大事な場面で絵が単調だからなのだ。このドラマのクライマックスは購買意欲が低い客に対して三軒家万智(北川景子)がプレゼンをするところだよね。単に家の良さを伝えるのではなく、その家に住むことによって変化する客のライフスタイル、人生との向き合い方を諭すところだ。だがそれだけだとドラマにありがちな人生指南の先生になってしまう。第6話で三軒家万智に活を入れられた足立が言った「自分の仕事は家を売ることだ。よけいなことを考えるのは傲慢である」。このプレゼンはあくまでも家を売るための手段としてのプレゼン、たとえ三軒家の話によって客がどんなに心を揺さぶられ自分の人生を見直すことになったとしても、それは商売のためである。それを示すのが「落ちた...」なのである。
だがドラマのこの部分、必ず部屋の中なので広くない。三軒家と客は部屋に入った位置からほとんど動かない。しかも一方的に三軒家がしゃべる。視覚的にはすごく単調なシーンなのである。吹雪の山荘の大広間で推理を披露する探偵なら回想シーンをはさむところだが、こちらは不動産屋。それを単調に見せないのが監督の腕の見せ所なのだが、第8話。

     

     (1) 「お二人で協力なさればこの家買えます。必ず」


     

     (2) 「ぶりっこキャラもやめようかな」


     

     (3) 「ご自由に」


     

     (4) (間)


     

     (5) 「前原さま」(妻)


     

     (6) 「津田さま」(夫)


     

     (7) 「この家、お買い上げいただけますか?」


     

     (8) (顔を見合わせる二人)


     

     (9) (微笑む)


     

     (10) 「はい」


     

     (11) 「落ちた...」

夫婦を狙うカメラは一方向、北川景子のカメラはアップと引きはあるが一方向、最後のカットだけ別方向と非常に単調なのである。さらに(4)のカットで夫は北川景子の方を向いてしまっているので、つぎの(5)と(6)の「前原さま」、「津田さま」が生きない。さらに夫は夫婦関係を継続すること、家を買うことに異存はないので、ここは妻の心の変化が重要であるのに(9)で妻が夫の方を向いて微笑むのが画面に入らない。ここは

     

     (4) (間)


     

     (5) 「前原さま」(妻)


     

     (6) 「津田さま」(夫)


     

     (7) 「この家、お買い上げいただけますか?」


     

     (8) (顔を見合わせる二人)


     

     (9) (微笑む−写真は微笑んでないけど正面から二人を撮る)


     

     (10) 「はい」


     

     (11) 「落ちた...」

こんなの私でも思いつくので、そうできない現場の都合があったのかもしれないが猪俣監督に比べると見劣りがしちゃうんだよなあ。残りの2話は猪俣監督で頼むよ。本当に頼むよ