9月に読んだ本

いくら速読の私でも、9月1ヶ月にこれだけの本を読んだわけではなく、途中まで読んで放り投げてあったものをどんどん片付けたらこうなった。一気に最後まで読まなかった本だから内容もそれなりのものが多い。

申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。

申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。

大手の経営コンサルタント会社に勤めていた人が書いた本。経営コンサルタントが行なう分析だとか、それに基づく提言はほとんど役に立たないと。筆者の経験で実績に結びついた仕事は、現場の人に話を聞いて問題点を抽出し、異なる部署の現場の人たちのミーティングをセットして改善点を話し合ってもらい、それをまとめて経営層に注進する。まさに「事件は現場で起こってるんだ」だ。これならコンサルタントなんかいらないじゃないかということだが、まさにそうだ。だが部署の利害から離れたところにいる外部の人が間に入って初めて可能なことってあるよね。だがこの手法は時間がかかるため、経営コンサルタント会社がやりたくないそうだ。


ポケット版  弁護士の論理的な会話術

ポケット版  弁護士の論理的な会話術

あたりまえのことしか書いてなかった...


三階に止まる

三階に止まる

ボタンを押していないのに必ず三階に止まるエレベータの謎を解く表題作をはじめ、ある出来事や現象をとことん理論的に解明する推理短編集。ふつうのミステリに飽きた人にお勧め。


統計学をまる裸にする データはもう怖くない

統計学をまる裸にする データはもう怖くない

ベストセラーになった「統計学は最強の学問である」は表面をなぞるだけだったが、これは豊富な実例をエッセイ形式で確率から回帰分析まで解説した本。これはなかなかの名著。


著者得意のスプラッター系のホラー短編集。そこはかとなく漂う悲しみが物語の底流にあり、けっして下品にならないのは著者の力量。


見開き2ページで1話なので寝る前に読むのにちょうど良い。ホラーだが、ほとんどの話はお化けじゃなくて変な人。やはりいちばん怖いのは人間だ。


ヤバい予測学 ― 「何を買うか」から「いつ死ぬか」まであなたの行動はすべて読まれている

ヤバい予測学 ― 「何を買うか」から「いつ死ぬか」まであなたの行動はすべて読まれている

上で紹介したのと似たような本だが、こちらは理論からは離れ、紹介されている実例も著者が携わったマーケティング活動などに関する、いま流行のビッグデータもの。私の会社でもあるのだが、自社のユーザに対して新しいプランの紹介などのDMを出すと「寝た子を起こす」ことになって解約が増えると。それを避けるためにユーザの特性を分析し、あるセグメントのユーザだけにDMを出すそうだ。やはりそうなのか。


ある少女にまつわる殺人の告白 (宝島社文庫)

ある少女にまつわる殺人の告白 (宝島社文庫)

最近はやりの、いろいろな人へのインタビューによって事件の全貌と真相が浮かび上がってくるタイプのミステリ。これはさらに進んで「そもそも何が起こったのか?」が読者に伏せられていて、それがわかるのがラスト近く。そしてその事件が物語のクライマックスになっている。


トラップ・ハウス

トラップ・ハウス

大型のキャンピングカーに閉じ込められた男女7人。そのわずかな空間で犯人の罠によって一人一人殺されたり意識不明の大けがをする。ミステリーの定番「雪の山荘」「南海の孤島」の極小版。著者の新しい物を産む出そうという心意気にいつもながら敬服する。


先導者

先導者

ある特殊な体質をもって生まれてきた主人公たちは、仮死状態になることで魂が肉体から離れ、死んだ人の魂をある場所に案内することができる。その場所で生まれ変わると富と名声が約束されるという無茶な設定。ただ幽体離脱を起こすためには酸欠の状態を作り出し死ぬ一歩手前まで行くのでダメージが大きい。死後の世界は、生きている人間が抱くイメージでできあがっているので、信仰心が薄れ死後の世界を想像することがなくなった現代は、死後の世界自体がどんどん崩れていく。


ブラックスワンとは滅多にないもの、存在することが想像できないもののたとえ。ビッグデータなどの分析的な手法はあくまでも現在から未来を予測するものなので一定の幅の変化しか想像できない。世の中の常識を覆すような革新的なイノベーションは分析的な手法では導けない。著者はそれを否定するものではないが、別のアプローチとして事例研究を提言する。


小さな異邦人

小さな異邦人

数年前になくなった著者の、単行本未収録の短編を集めたもの。すべて後期の作品だと思うが、読者が予想できない結末を作ろうという著者の創意と熱意はまったく衰えてなく実に惜しい人を日本のミステリー界は失った。表題作は中学生3年生の少女が長女である6人兄弟の家に「子どもは預かった。無事に返して欲しければ3000万円用意しろ」と電話がかかってくる。だが子どもは6人そろっていて誰も誘拐されてない。別の家の子どもとまちがえた、誘拐したのは別の子どもだがこの家に金を払って欲しかった、身代金の受け渡しのときになにかをしたかった、などを想像したがすべてハズれ。たしかに子どもの命は犯人の手に委ねられている...


人喰いの時代 (ハルキ文庫)

人喰いの時代 (ハルキ文庫)

豊洲紀伊國屋書店で猛プッシュをしていた本で、「最後の一編でそれまでの世界がひっくり返る」的なポップがついていた。これは読むしかないでしょ。そして後悔した...ふつうじゃん