8月に読んだ本

アンソロジー 捨てる

アンソロジー 捨てる

人気女性作家による「捨てる」をテーマにしたアンソロジー。いかにもこの作家らしいという作品から、この人がこんな話をというものまで。旅のお供にちょうど良いのではないか。だが厚い紙を使っているので文字数のわりに本がでかい。


わたしたちの、小さな家

わたしたちの、小さな家

分類するならホラーなのだろうか。全貌が明らかになってホラー展開になる終盤より、家族や友人との日常を描く前半のが小説として出来が良かった。ホラー部分の捻りをもっと小さくして「日常のちょっとしたホラー」的な話にまとめた方が筆者の力量が発揮されるような気がした。


絶対に行けない世界の非公開区域99 ガザの地下トンネルから女王の寝室まで

絶対に行けない世界の非公開区域99 ガザの地下トンネルから女王の寝室まで

ナショナルジオグラフィックによる普通の人は入れない場所を写真と解説で紹介する本。本屋でパラパラと見たときは面白そうだったんだが、やはり99個は多いのだと思う。軍事関係の施設がけっこうな数を占めて、これはそりゃそうだろうと。宗教関係とか人体に有害な場所(サイレントヒルのモデルになった町とか)が面白い。日本からは伊勢神宮が登場。原著は99ではなくて100で、日本版を出すときに一つを割愛して99になったそうだ。省かれたのが福島原発らしい。


Y駅発深夜バス (ミステリ・フロンティア)

Y駅発深夜バス (ミステリ・フロンティア)

著者は再デビューと書いてあるが、かなり高い水準のミステリー。それぞれが違うテイストの短編で飽きない。なにより小説としての完成度が高く次作が楽しみ。


殺し屋シリーズの3作目ということだが、前2作は会話の中にちょっと出てくるだけで無関係。凄腕の殺し屋だが、会社員で家では奥さんに頭が上がらない。高校生の息子がよくできた優しい子で、父親に同情しながらも表だって肩を持つと母親が怒るのでさりげなく応援する。そんな父親の仕事と家庭を描いた連作短編集だが、ラストの方の構成が意表を突いている。「ええええ、そう来るかあ」の3連発。もうベテランの域に達しながらも読者を驚かせようとする作者、まだまだ面白い話を書いてくれそうだ。


サクラ咲く (光文社文庫)

サクラ咲く (光文社文庫)

学校を舞台にした長めの短編が3つ。プロットは奇抜なものではない。これを下手くそな作家が書いたら陳腐でわざとらしい話になると思うんだよな。それを極上の小説に仕上げてしまうのが作者の力量。とりあえずこの人の直木賞以降の作品はぜんぶ読んでもハズレはないような気がしてきた。表題作は映画に向いていると思うのだが映画化されていたんだな。出演が「新井愛瞳, 真剣佑, 神尾楓珠, 吉川友, 早織」...誰っ(`Д´)!!!!


ヤマケイ文庫 ドキュメント 気象遭難

ヤマケイ文庫 ドキュメント 気象遭難

kindleストアで安売りをしていたので読んでみた。シリーズになっていて本作は気象の急変によって起こった遭難事故のドキュメント。「山と渓谷社」の発行なので読み物として盛り上げるというより、あくまでドキュメンタリーで、登山者に参考になるように地図や当日の気象図も掲載されている。登山はまったくの未経験者の私の感想として事故が起こる条件が「準備不足」、「空を見て気象の変化を読み取れる人がいない」、あとはなにより「引き返す勇気」。これはビジネスやスポーツにも言えることだね。

最後は寝る前に読んだホラー短編集。

拝み屋異聞 うつろい百物語 (イカロスのこわい本)

拝み屋異聞 うつろい百物語 (イカロスのこわい本)

筆者は角川文庫以外から初めての出版。角川のは薄いのでボリウムがうれしい。

怪談狩り 禍々しい家 (角川ホラー文庫)

怪談狩り 禍々しい家 (角川ホラー文庫)

新耳袋」の作者の一人。安定の一冊。

恐怖箱 叫怪 (竹書房文庫)

恐怖箱 叫怪 (竹書房文庫)

初めて読む作者。ホラー短編集って内容よりも実は文章力。この作者は悪くない。