冬休み映画まつり「少女は自転車に乗って」

神保町にある岩波ホール、日本の映画館の良心。その存在は中学生のころから神保町が好きだったので何度も前を通って知っていたが、今週はじめて中に入ったよ。とてもきれいなんだけど古い。きれいなのは床とか椅子とか壁ね。古いのは劇場の構造。幕が開くと舞台があって、その奥がスクリーンになっているので思ったよりスクリーンと遠い。さらに奥の壁の全面がスクリーンになってないので予想より画面が小さい。あと椅子にドリンクホルダーが無い。私はドトールのコーヒーを買って中に入ったのでずっと手で持ってたよ。でもここは岩波ホール。飲みながら見ていたのは私だけで、私以外の全員は椅子の上に正座して姿勢を正して見ていた(ウソです)。
     
この作品はサウジアラビアの10才の少女の物語。監督はサウジアラビア初の女性監督。そもそもサウジアラビアには宗教的な問題で映画館がないそうだ。これはいい映画だった。2014年が始まってまだ1週間だが、今年の映画のベスト3入りは確実だ。主人公の少女は、男の子が自転車に乗っているのを見て自分も自転車に乗りたいと思う。自転車くらい買ってもらえよ、産油国なんだから自転車の10台や20台すぐに買えるだろうと思うだろ。だが、この国は女性の自由とか権利が著しく制限されている。男性に顔を見せてはならない、結婚をしていない男性と道を歩いてはならない、男性は4人まで妻を持つことができるが女性は一人の夫につかえる。そんな国だから母親に自転車を買ってとねだると、女の子がとんでもないと叱られる。家には大型の液晶テレビやプレステがあるのでけっして貧しい家ではないのにだ。今度生まれ変わったら中東の産油国がいいと思っているそこのあなた、絶対にやめた方がいい。女性がつらすぎる。
少女は、コーランの大会で優勝すると自転車が買えるだけの賞金がもらえることを知る。自転車のために大嫌いなコーランを必死で練習する少女。彼女の父親はたまにしか家に来ない。妻が4人も持てると、結局お妾さん状態なのだ。しかも男の子が生まれないため母親は風前の灯火になる。クライマックスはコーラン大会。がんばる少女、だが意外などんでん返し。失意の少女が家に帰ると、そこには夫に捨てられたこれまた失意の母親がいた。そのあとに来るサプライズ。そこで観客はこの映画のテーマを知ることになる。さらにこの映画においての母親の役割がそこでわかる。母親が夫に気に入られるために買おうとしていた赤いドレスと少女が欲しかった自転車が暗示するもの。女性監督がこの映画を通して同胞の女性に訴えたかったこと。これらが母親や少女の口から語られるのではなく、たったワンカットの映像だけで、観客の胸の内で組み合わさる。まいった。まいりました。
帰りにパンフレットを買ったら、やけに厚い。いろいろな人の評論やこの映画の背景であるサウジアラビアのことが書いてあるのだが、なんと
     
映画のセリフが丸々ぜんぶ載っている。どういうこと??? これを読んで思い出してくださいってことかな。こんなパンフレット初めて見た。なんだかわからないが岩波ホールはすごい