8月に読んだ本

8月は夏バテ、電車も空いてて行きも帰りもけっこう座れた。なのでもっぱら睡眠。当然、車中での読書のペースが落ちるわけだ。

生首に聞いてみろ

生首に聞いてみろ

何年か前の「このミステリーがすごい!」で1位になったのではなかったかな。分厚い本なのだが、殺されるのは一人。その殺人を一つ一つ手がかりを検証しながら解決に向けて進んでいく...地味だよ、すごく地味な話だよ。この厚さなら5人は殺されてくれないと。


純平、考え直せ

純平、考え直せ

ヤクザの使い走りの青年が、組長から鉄砲玉を言いつけられる。狙うのは敵の組長の命。決行までの2日間(だったか3日間)、娑婆での最後の日々を過ごす主人公。そこで出会う様々な人々といろいろな出来事。主人公を取り巻く人々の人物描写がさすが奥田英朗。といっても大きな振幅がある話ではないので、よくできたB級映画を見た後のような清々しい読後感。


残穢

残穢

あるマンションの一室に住む作者の知人の家で起こる怪異。この場所で過去にいったい何が起こったのか。作者と知人はそこに住んでいた人をどんどん過去にさかのぼり調査をしていく。一代前ではすでに怪異が起こっていた。二代前も...こう書くと魅力的な話だが、実話なのかフィクションなのかはわからないが、とにかく実話風なのでホラー映画のような派手な展開があるわけではない。これまた地味な話。


白ゆき姫殺人事件

白ゆき姫殺人事件

傑作と駄作の落差が激しい著者。これはどっちだ。ある事件について関係者の証言を連作風に綴る手法は作者の得意なスタイル。この物語の構造に仕掛けが隠されている。あ、書いちゃった。


内田樹先生の対談集の第二弾。原発がそのうち片付くと思うのは大まちがい、あれは新しい技術が生まれない限り近寄れない。高齢化も止められない。だが悲観ばかりすることはない。国のどこかに近寄れない場所があって、町は老人ばかり。これは何かに似てないか。そう「風の谷」だ。放射線と高齢化から目を背けるのではなく、どうやって付き合っていくかを考え、その覚悟をして風の谷の人々のように暮らしていくのだと半分冗談で内田先生は説く。ではナウシカはどこにいるのか。やはり皇室なのではないかと。うん、私もそう思う。私は佳子様のためなら死ねる。


台湾人には、ご用心!

台湾人には、ご用心!

この本、いつかアマゾンで注文しようと思ってたのでまさか近所の本屋で買えると思わなかったなあ。台湾に住む日本人の著者から見た台湾の社会と台湾人。台湾人は中国人とはまったく違う。むしろフィリピンやマレーシアのマレー系とDNA的にも近いそうだ。日本には独特の感情を持っていて「好き」というより「身近」な国。昨年の大震災もまるで自国に降りかかった災難のように感じていたそうだ。ただあとがきで作者が注意しているのが、台湾人が好きなのはあくまで「現在」の日本人と日本の文化であると。なるほど。なお、表紙のイラスト、タイトルと中身は無関係。


鬼談百景 (幽BOOKS)

鬼談百景 (幽BOOKS)

上から3番目の本と同じ作者の実話系ホラー短編集。トイレに行けなくなるほど怖い話があるわけではないが作者の語り口を楽しむ本。


彼女が追ってくる (碓氷優佳シリーズ)

彼女が追ってくる (碓氷優佳シリーズ)

「扉は閉ざされたまま」に始まるシリーズの3作目。コロンボのように完全犯罪を目論む犯人の視点から描いたミステリー。成功するかに見えるが、そこに居合わせたある一人の女性によって看破される。この人がシリーズの探偵役なのだが、なにしろ存在感が希薄なのが特徴なので探偵側には感情移入ができないのがこのシリーズの持ち味。