12月に読んだ本

では、今年最後の読書感想文。

物理学と神 (集英社新書)

物理学と神 (集英社新書)

「神」との関わり合いをテーマにした物理学史。17世紀あたりまでの科学者(そもそも自然科学がカテゴライズされたのがこのあたりからなのだが)は自分の発見が神の存在を否定しないことに神経を尖らせていたことにびっくり。この感覚は日本人にはわからない。20世紀になると「神」は宗教上の神から、「必然性」に取って代わる。アインシュタインが「神はサイコロをふらない」のアレね。


自分のアタマで考えよう

自分のアタマで考えよう

正直、この人の意見はあまりに物事の一面しか見ていなくて賛同できない。だがこの本で述べられている物を考えるプロセス、方法論は参考になる。でもなんでそれを著者が実践できないのか。


有事対応コミュニケーション力 (生きる技術!叢書)

有事対応コミュニケーション力 (生きる技術!叢書)

震災後のこの国のあり方について気鋭の論者による対談集。政府の発表以上に原発の影響は甚大だが日本人は今後100年は放射能と付き合うしかない、マスコミの取材能力のなさ・ジャーナリストとしての良心のなさが今回の震災で露呈してしまった、放射線で汚染された排水を太平洋に流した賠償金が500〜600兆円になる、など気が滅入る話ばかり。それでもこの国で生きていかなければならない、その心構えの書。


その「正義」があぶない。

その「正義」があぶない。

タイトルにひかれて買ったが期待はずれ。ただのエッセイ集だった。


連続殺人鬼 カエル男 (宝島社文庫)

連続殺人鬼 カエル男 (宝島社文庫)

こちらは逆にうれしい誤算。ふざけたタイトルだが、内容は硬派のサイコミステリー。最後の2重3重のどんでん返しは見事。アクションシーンも随所にありドラマ化がしやすいかもしれないが、殺し方が凄惨すぎてテレビでは無理。この本を読んでつくづく思うのが、推理小説を紙媒体で読むことの限界を感じる。最初の容疑者が逮捕されるが、残りの紙面の量でそれが真犯人ではないことがわかってしまう。これはテレビドラマでも同じ。


憑依―異形コレクション (光文社文庫)

憑依―異形コレクション (光文社文庫)

以前につまらなくなったと書いたことがある異形シリーズだが、どうしてどうして。このクオリティはシリーズ中でも上位に入るのでは。静かに世代交代が進んでいるのだね。


弁頭屋

弁頭屋

しまった、読んだことがあった。ホラー短編集である本書、タイトルはその中の一つだが、別の短編のタイトルを本のタイトルにした「壊れた少女を拾ったので」が角川ホラー文庫から出ている。そっちを読んでいたよ。まぎらわしいことをすんなよ。この人の作風をひと言で言えば「ファンタジースプラッタホラー」。我々が生きるこの世界とちょっとずれた世界で起こる不気味な話なのだが、不思議と爽やかな読後感がある。


物の怪 (講談社ノベルス)

物の怪 (講談社ノベルス)

河童、天狗、鬼。日本古来の妖怪伝説にからめたミステリー。犯人はもちろん普通の人間の計画的な犯罪なのだ。作者のこの分野における博学ぶりを披露した作品ではあるのだが、話自体がつまらないよ。


夏の夜会

夏の夜会 (光文社文庫)

夏の夜会 (光文社文庫)

これはよくできているなあ。友人の結婚式で30年ぶりに顔を合わせた小学校時代の友人たち。30年前の夏に起こった担任の先生の殺人事件について語り合ううちに、みんなの記憶から欠落しているなにかが判明する。あの夏にいったいなにが起こったのか。新たな関係者が登場するたびに様相を変えていく30年前の事件。終盤は各自の記憶の齟齬から、なぜその食い違いが起こったのかが手がかりになって核心に迫っていく。

ではここで2011年に私が読んだ本からお勧めを5冊。私が今年に読んだというだけで、発行は以前の作品のものばかりです。

  ・最愛*1

  ・トッカン−特別国税徴収官*2

  ・台湾人と日本精神*3

  ・NOVA5*4

  ・連続殺人鬼カエル男