7月に読んだ本

世界の変化を知らない日本人 アメリカは日本をどう見ているのか

世界の変化を知らない日本人 アメリカは日本をどう見ているのか

タイトルだけ見るとよくありがちな日本人自虐本っぽいがそうではない。今回の大震災でアメリカはなぜあれほど大規模な作戦を展開してくれたのか? もちろん彼らのヒューマニズム、長年の日本との同盟関係はあろう。それにしても規模がケタはずれすぎる。ヒントとして、別働隊が尖閣諸島に向かったことを書いておこう


京極夏彦をはじめ人気作家による実話系怪談集。実話系(この「系」がミソ)怪談集はたくさんあるが、やはり小説家が書いた物は読ませる。


【映画化】完全なる首長竜の日 (『このミステリーがすごい! 』大賞シリーズ)

【映画化】完全なる首長竜の日 (『このミステリーがすごい! 』大賞シリーズ)

作者はこの本でなにかの新人賞を獲った。ということは新人、デビュー作に近いはずなのだがいやはやすごい人だね。主人公の日常と、主人公を取り巻く事件が交互に描かれる。だいたい新人の場合、この日常部分がやたら退屈だったりするのがだ、作者はここで十分に読者を引きつけられる筆力を持っている。舞台は現代の日本。ただし現実にはないあるメカが物語のテーマになっている。ラストで2回のひねりが効いていて、その2回目が結局どういうことなんだ?


論理パラドクシカ 思考のワナに挑む93問

論理パラドクシカ 思考のワナに挑む93問

論理力を鍛えるための問題集。論理力といっても数学的なそれではなく哲学的なそれ。


ホラーからは離れがちな作者なのだが、これはこの作者らしいホラー短編集。少し前の作品なのだろうか。新作にこのようなテイストのものがないのが残念。


台湾人と日本精神 (小学館文庫)

台湾人と日本精神 (小学館文庫)

こういった本に感銘を受けていると私がウヨクと思われそうなのが残念。あとがきの著者の言葉を記す。「かっての祖国・日本の若者達よ、あなた方の先人達は実に立派であり、いまも台湾の地に『日本精神』が崇敬されている事実の語るところを君達の後世に伝えられよ。そして自国の歴史を正当に評価し、自信と誇りを持って堂々と胸を張って未来に雄々しく羽ばたいて欲しい」。


カササギたちの四季

カササギたちの四季

直木賞を獲った著者。やっと直木賞を獲ったので純文学からミステリーに戻ってきた。うれしい。リサイクルショップを営むワトソン役の主人公と、ホームズ役の友人。そしてその友人を敬愛する女子高生。ところがこの友人の推理はダメダメ。だが女子高生を悲しませなくないために、二人にわからないように、こっそり事件を解決する主人公。


いじめられっ子の少年が行方不明になる。数年後、その友人、母親、父親、妹につぎつぎ厄災が降りかかる。もちろん少年が行方不明になったことにこの4人は責任があったわけだ。途中まではおもしろいんだがなあ。クライマックスを活劇にしたために、そこまでのひたひとと忍び寄る不気味さがぶちこわし。じつに残念だ。


ダークゾーン

ダークゾーン

こういう話が好きな人はどうぞ。私は嫌いだ。


おそろし (新人物ノベルス)

おそろし (新人物ノベルス)

ある出来事から立ち直れない主人公。寄宿先のおじさんの計らいで、他人の奇妙な話を聞いてあげるという仕事を始める。ラストは自分自身の出来事を解決することになるが、そこが活劇なんだな。そこがイマイチなんだな。


魏志倭人伝、ドラッカーも! 2000年前から外国が絶賛 日本人はなぜ世界から尊敬され続けるのか

魏志倭人伝、ドラッカーも! 2000年前から外国が絶賛 日本人はなぜ世界から尊敬され続けるのか

タイトルは大げさだが、3月の震災での日本人の冷静な態度は世界から賞賛を浴びた。実は関東大震災のときも、安政の大地震のときも日本人の冷静さは世界から賞賛を浴びていたそうである。まあ、諦めるしかないからね。日本の強さは中産階級の厚さだと思う。私が小学生のときは「日本は貿易で成り立っている」と習ったが、いまでは内需が7割から8割を占めているので、原油の値上がりや円高などの外部変化に対して強い国になっている。この中産階級の厚さ、実は江戸時代がそうだったのだ。なぜ江戸時代に日本の中産階級が育ったかというと平和な時代が300年続いたからである。こんな国、世界にないだろう。ただ私が以前から疑問だったのが、ほかのアジアの国はことごとく西欧列強の植民地になってたのに日本は侵略されなかったのか? この本を読んでその疑問が解けた。ザビエルに続いて日本に来たイエズス会の牧師が本国にこんな報告をしている。「日本は何らかの征服事業を企てる対象としては不向きである。日本は私がこれまで見てきた中でもっとも国土が不毛かつ貧しい故に求めるものは何もない。また国民は非常に勇敢でたえず軍事訓練を積んでいる」ようするに征服しても搾取するようなものが何もない。そのくせ強いのでこちらの被害も大きいだろうと。こんな国、300年間放置されるよね。


なぜ私たちは過去へ行けないのか―ほんとうの哲学入門 (魂の本性)

なぜ私たちは過去へ行けないのか―ほんとうの哲学入門 (魂の本性)

「なぜ過去へのタイムトラベルができないか?」「なぜ鏡は左右だけがひっくり返るのか?」この2つのテーマを哲学の手法で考えようという野心的な本。「僕の彼女はサイボーグ」で私が展開したタイムトラベルの考え方*1がこの本に載っていたよ。あれは「並行多世界説」と呼ばれているのだそうだ。ただし著者は「この説を採用することによって矛盾は避けられるかもしれませんが、少なくともタイムトラベル物語としてはまったくつまらないストーリーになってしまうでしょう」つまらなくて悪かったな