7月に読んだ本

世界を見る目が変わる50の事実

世界を見る目が変わる50の事実

これ、何かの本とまちがえて買ったような気がするんだよね。だって、こんな本、私は嫌いだもん。ベストセラーになった世界が100人の村だったらの大人向け。世界はいかに貧困と悪に満ちているか、富は一部の先進国に集まっているかを実例にそって解説した本。日本に生まれて良かったね。


贖罪 (ミステリ・フロンティア)

贖罪 (ミステリ・フロンティア)

「告白」以来、注目を集めている作家。2作目の「女学生」は毒が抜けてしまい「ああ、この人は一発屋」だったかと思ったのだが、この3作目は1作目に劣らない毒で作者の力量を感じる。とくに1作目は加筆した最終章が蛇足も蛇足、あれがなければ傑作なのにと思ったのだが、これはきれいにまとまっていて後味の悪い読後感が最高。


修羅の終わり (講談社文庫)

修羅の終わり (講談社文庫)

よく製本ができたなと思うくらい分厚い文庫本。それを飽きさせずに一気に読ます作者の手練れぶりよ。面白かったのだが、もう内容が思い出せないので意外と底の浅い話だったのか。私の記憶力のせいなのか。


耳をふさいで夜を走る

耳をふさいで夜を走る

変な話を書かせたらこの人の右に出る人はいない。もちろんドタバタ・ナンセンスではないのだよ。妙な設定、どこかが少しだけ狂ってる登場人物、微妙にずれる物語の進行。とにかくこの人の小説は変なのだ。


705号室 ホテル奇談

705号室 ホテル奇談

これは古本屋で安く売ってたから買った本だなあ。ぜったいに定価では買わないな。あるホテルの曰く付きの部屋を巡る連作集。章ごとに人物が替わり、じょじょにその部屋ではなにがあったかが解き明かされてくる。ただ、ホラーによくありがちなのだが、日常から少しずれているのが怖いのだが、その部屋がそうなった理由を述べるには日常からすごくずらさないといけない。そこをいかに自然に書くかがホラーの勝負なのだが、これは残念賞。ずれすぎ。


終わらない悪夢 (ダーク・ファンタジー・コレクション)

終わらない悪夢 (ダーク・ファンタジー・コレクション)

海外のホラーアンソロジー。これはなかなかの粒ぞろい。それぞれ文学の薫りのする良作。ひたすら怖い話を読みたい人にはお勧めできないが。


戦争論理学 あの原爆投下を考える62問

戦争論理学 あの原爆投下を考える62問

応用倫理学という分野がある。哲学は考えること自体が目的で、結論を出してしまったらそれは成果ではなく思考停止。哲学の一分野である倫理学も同様。よって、死刑は是か非かとか、なぜ人を殺してはいけないのかなどの問いに対して哲学は答えを出さない。ただ、法や教育の場では、たとえそれが人の世の真理ではなくても一定の結論を出すことが求められる。人間社会に生じる様々な問いに対して、善悪だけでなく損得や人の心(勘定と感情と言われる)まで考慮して答えていこうとするのが応用倫理学である。この本は原火暴の投下は正しかったかについて、史実をもとに実にいろいろな角度から応用倫理学、論理学の立場から検討を加えていく。今月のいちばんのお勧め本。


透明人間の納屋 (ミステリーランド)

透明人間の納屋 (ミステリーランド)

売れっ子のミステリー作家が、少年少女向けに書き下ろした全集の中の一巻。子ども向けだからと手を抜かずどの作家も実にがんばって書いている。漢字にはすべてルビが振ってあるので読みやすいぞ。いや、うっとおしいぞ。


遠くて浅い海 (文春文庫)

遠くて浅い海 (文春文庫)

この作家は実に多彩な人だなあと思う。多彩と言っても映画監督をするとかコメンテーターをするのではなく、とび職の話とか、頭に角が生えたOLの話とか、エンターテイメント小説の一人デパート。その中で同じ主人公が登場する何作かの一つがこれで、作者の代表作の一つ。「消し屋」と呼ばれる殺し屋の話で、この人はゴルゴ13と違って、殺人が行なわれた痕跡さえ消す、まさに人をこの世から消すことを職業としている。今回の依頼は、大金持ちの天才を自殺させるというインポッシブルなミッション。この天才や依頼主の意外な過去とか、主人公と天才の親交と駆け引き。主人公の恋人のニューハーフとかいろいろからんで、ラストはきれいに着地。うん、うまい