北川景子「大女優への道」−チェリーパイ視聴レポ−

すっかり忘れていたよ、これを書くのを。訳あって、もうDVDも手元にないから登場人物の名前さえわからなくなっているが、私の近所のTSUTAYAにも置いてあったくらいだから、まだ見てない人は10月からのドラマが始まる前までに見ておくように。この映画、夜の単館上映だったし、おそらくDVDのセルを目的とした映画なので、今後の北川景子の歴史では初の主演映画はディアフレンド*1となるかもしれないが、まちがいなく初の主演作品である。
ネタバレもなにもバレるような筋もないのだが、北川景子演じるキヨハラと、キヨハラの回りの3人の女性はみんな失った恋から立ち直ることができない。3人の中で唯一、元気の良かった人も妻子ある人の子ども宿し撃沈。ここからしてまちがいかもしれん。なにしろ8回くらいに分けて、それぞれ間を2週間くらい空けて見たのだよね。でもストーリーを追いかける映画と言うより、そのシーン、シーンの役者の演技とか雰囲気を楽しむ映画でしょ。これはそんな女性たちの再生のドラマである*2 *3
再生と言っても、なにが起こるわけではない。キヨハラだけはちょっとしたイベントが起こるけど、何かをきっかけに立ち直るというより、いまの自分をそのまま受け入れて、その自分に折り合いをつけることでみんなまた歩き出すということじゃないかな。不幸というのは出来事ではないと思う。不幸な出来事が起こるのではなくて、その出来事を受け入れることができない自分の気持ちが不幸の正体だ。だから結局は自分でなんとかするしかない。なんともならなかったら、時が解決してくれるまで静かにただ待つだけだ。
この映画、大きな起伏も無く、たんたんと話が進む。チャプター6までがんばって見よう。チャプター7から物語が急展開する。チャプター6まではけっこうキツかった。こういう映画って、アクション超大作とは別の意味で映画館で見た方がいい。机の上で、しかもノートパソコンで集中してみるのはかなり忍耐が必要だ。だから、これからレンタルで見る人は部屋を明るくして離れて見るのではなくて、部屋を暗くして近くで見よう。がんばってチャプター7まで行けば、失ったものは二度と戻らない悲しみと、深い悲しみの中から静かに浮かび上がってくる希望に涙する北川景子の名演技が見られるはずだ。自分が悲しみの中で立ち止まっていても、季節は巡り、木は葉をつけ、花を咲かし、赤い実がなる*4。だからおまえもそろそろ歩き出せ、少しずつでいいから前へ進めと、木が、風が、空がキヨハラの背中を押す。か、どうかわからないが、あのシーンは泣けた。
特典映像は北川景子が満載。主役だから当たり前か。とするとディアフレンドのDVDも買った方がいいの。インタビューで「いままでは自分と違う役ばっかりだったので、今度の役はいちばん自然に演じることができた」と言っていた。ディアフレンドを観たとき、ヤンキーの役があまりにも迫真の演技だったので、クライマックス後の病院での演技がいまいち物足りなかった。チェリーパイの北川景子がいちばん自然に演じられたという等身大のふつうの女性の役、ここにはまだ北川景子の課題が残っているように思った。もちろんこの役は意外と難しい。物語の起伏が小さい上に、感情の振幅も小さい中でそのときどきの心の動きを出さないといけないシーンが多い。北川景子の芸歴を考えれば十分に及第点だし、同年代の別の女優がやったらもっと低い水準の映画になっただろう。
だが、それでもあえて言うと、まだまだ北川景子は発展途上である。だから次回作、次々回作が楽しみなのである。そして、そういう見方をするのはチェリーパイを演じているのが元セーラー戦士北川景子ではなく、女優北川景子として見ているからなのである。

*1:いつも綴りのまちがいを指摘されるからカタカナで書くの

*2:レポを書いててこれほど自信が持てないのも初めてだよ

*3:私はこの手の映画は苦手だとわかった

*4:さくらの木だから順序がちがう?どうでもいいや