「Dear Friends」レビュー(後編)

冒頭のシーン。リナ(北川景子)が彼を寝取ったと友達と一悶着。バスの席に座るリナが、目が不自由な人に席を譲る譲らないでおばさんと一悶着。学校ではこのままでは進級できないと先生と一悶着。ドラマによくあるシーンだが、北川景子に肩入れをしているために新鮮な発見があった。すべて真理ではない。宇宙の真理においてリナがまちがっているわけではない。ルールに従ってないだけなのだ。ルールに従ってない者を、真理において断罪するのは難しい。ボールを持って走ってはいけないのはサッカーのルールだ。だが、サッカーをする気がない者にボールを持つなと言っても説得力がない。サッカーの場合はそのような者はフィールドに入れなければいいのだが、市民社会となるとそうはいかない。だが、そのリナでさえ、彼女自身のルールに基づいて生きているわけだが、リナのルールを無視してドカドカとリナの内側に入り込んでくるのがマキ(本仮屋ユイカ)でありカナエ(佐々木麻緒ちゃん)なわけだ。この異端者たちに対する北川景子のとまどいの演技が上手だ。
いろんなことがあって、この二人に少しずつ心を開いていくリナであるが、自分のスタイルはあくまでも崩さないのがいい。いよいよヤバそうなカナエが「私はもう死んじゃうかもしれない」と言う。それに対するリナのセリフ。

     「死なないでくれるかなぁ」

ここは泣ける。こういう気持ちを押さえたハードボイルドなセリフに私は弱いぞ。ここでコロっといい子になったら観客はしらけるが、あくまでもリナの延長上で悲しみと労りを表現する北川景子は見事だ。
さて、この映画はよく言えばわかりやすい、悪く言えばありきたりの話、しかも暴力シーンもなく、性描写もないので*1お子様からお年寄りまでご家族みんなで楽しめる*2。なにより、北川景子がこの2年間で到達した地平、人は努力をすればどれほどのものになれるかを北川景子は我々に見せてくれた。
私の個人的な好みでは、クライマックスの屋上のシーンの後はもっと短くてもいいように思う。海辺のシーンで終わらせて、あとは字幕とナレーションにしてしまったほうが余韻が残るように思うのだがどうだろう。

*1:いつもその一歩手前で何かが起きる

*2:ほんとにそうか?