妖魔はなぜ触手を伸ばすのか?

まずは次の一覧を見て欲しい。

  act 3 セーラームーン
  act 4 セーラーマーズ、うさぎ
  act 6 まこと
  act12 愛野美奈子セーラーマーキュリー&ムーン&マーズ

これは第1クールで妖魔の触手攻撃に遭遇した被害者である。act12に至っては木野まこと以外の全員が触手の洗礼に遭っている。なぜ番組前半でこれほど触手が多用されたのか?ご存じの方も多いと思うが、触手は少女エロマンガの定番アイテムである。ただ主対象が幼児であるセーラームーンが、エロ路線をわざわざ狙うとも思えない。ここに「セーラー服美少女戦士セーラームーン」の特徴と限界がある。
「進化する戦闘シーン」でも書いたが、セーラームーンの特徴は「変身後も顔出し」「演じるのは強そうじゃない美少女」「戦闘服はセーラー服」「対象は幼児」である。セーラー戦士への敵の攻撃は

  痛そうなのはNG

なのである。身体がプロテクターに覆われたライダー、顔が隠れて表情がわからないレンジャーなら殴る、蹴る、光線が当たって身体から火花が飛ぶなど、多少のダメージは現実感が乏しいので許される。ところが見るからに薄く、材質が布製のコスチュームでは敵の攻撃はそのまま身体的な苦痛を連想させる。たとえセーラー戦士のコスチュームが古代月の王国で作られた1000度の高熱に耐え、10tの衝撃をはじき返す特殊繊維「ルナテックス」で織られていたとしてもだ*1。さらに戦闘中も顔が出ていることが強い現実感を持ち、戦士の痛みは視聴者の痛みとなり、「架空の戦い」は「現実の暴力」となる。そんな制約条件の中で、妖魔はセーラー戦士をどのように攻撃すればよいのだろう。

  1.絞める
  2.投げる
  3.光線で痺れさせる
  4.はたく程度にぶつ(胸部、腹部への攻撃は厳禁)
  5.やけどをしない程度の距離をあけて爆発

すべて実写版セーラームーンで出てきた妖魔の攻撃である。1番目の「絞める」を手でやったら生々しい。そこで触手の登場なのである。

*1:嘘です。そんな設定はありません