検証・これが実写版の台本だ!−act42(その2)

さて、昨日の解答が台本の続きに示されている。放送では怪我をした亜美を見て、Pムーンに封じ込められた月野うさぎの人格が覚醒し、Pムーンが持っているヒーリング力を使って亜美の怪我を治す。ところが、その後のPムーンのセリフ「マーキュリー、ルナ」は口調からしてプリンセスだ。すると、プリンセスは二人に何を伝えたかったのか。「また怪我をするといけないから下がっておれ!」かな。でも人格がうさぎからプリンセスに戻ったとたんにこのセリフはいかにも唐突。これが私がずっと解けなかった疑問である。
ところが、台本ではプリンセスの意志でヒーリング能力を使い亜美の怪我を治している。月野うさぎではない。すると、Pムーンはなんのために亜美の怪我を治したのか。こんなことをしている間にM妖魔2に攻撃される危険さえある。怪我をした亜美が可哀想だからか。ちがう。台本のト書きを読んで欲しい。亜美では無い、セーラーマーキュリーを戦列に復帰させるためだ。すると、このセリフの意味がわかる。

     「マーキュリー、ルナ、早く私と一緒に戦え。なにをしている。傷は治してやったではないか」

プリンセスにとってマーキュリーは親友でも仲間でもない。ただの武器なのだ。プリンセスは武器が壊れたから修理をしただけだ。そして、この関係はプリンセスにとって既定の事実なのだ。このあたりはLeo16さんが書かれたact42の論評*1は、放送では変更された台本の核心に迫っている。プリンセスはセーラー戦士の友達や仲間ではない。プリンセスにとってセーラー戦士はただの兵士、手駒である。しかもエンディミオンを手に入れるただその一点だけを行動原理として動いている。そのプリンセスの戦闘形態であるPムーンはいったん出現したら最後、セーラー戦士たちでコントロールできる相手ではない。だからセーラー戦士はPムーンがたとえM妖魔に対抗できる戦力を持っている存在だったとしても、たとえ月野うさぎを遠ざけることになっても、出現させてはいけない相手なのだ。Pムーンには愛も正義もない。愛と正義がない圧倒的な力は悪に等しい。Pムーンは実写版ではダークなキャラクターなのだ。
放送されなかった欠損部分を、我々は原作やアニメの知識で自然と補っていた。だが、前世のプリンセスがアニメとはまったく違ったものだったとしたら。act42でカットされたプリンセスとセーラーマーキュリーの関係から前世の姿を再構築したら、実写版セーラームーンに我々が抱く3つの謎、「非対称問題」「うさぎ問題」「最終回問題」の解決が付くかもしれない。
ところで問題の「亜美ちゃん!」だが、このセリフさえ無ければPムーンのしぐさや表情は台本どおりなのでアフレコ段階で後から付け加えられたセリフのような気がする。act46で、PムーンはM妖魔にエナジーを取られた人々を元に戻す。それを見た水野亜美はact47で「あれはうさぎちゃんじゃないかな」と言った。放送時はact42だってうさぎちゃんだろうと思ったが、act42は元々はうさぎちゃんではなかったのだ。
(つづく)