検証・これが実写版の台本だ!−act42(その3)

ここで非対称問題についてもう一度考えてみたい。非対称問題とは*1 *2前世においてセーラームーンだけはいなかった、つまりセーラームーンとは何者かを問うものである。

     現世   →前世

     火野レイ →セーラーマーズ(セーラー戦士

     水野亜美 →セーラーマーキュリーセーラー戦士

       :

     月野うさぎ→プリンセス・セレニティ(王女)≠セーラームーンセーラー戦士

昨日も書いたように実写版で放送されたかった部分を我々は原作やアニメの知識で補って納得していた。とくに放送ではほとんど説明がなかった前世はそうだ。だが、小林靖子ワールドでの前世の姿がアニメとまったく違うものだったら?我々はいままでまちがった前提条件で非対称問題を考えていたのではないか。
act36、Pムーンが出現してベリルに向かって歩を進める。その後ろ姿を見てセーラーヴィーナスは「プリンセス・セレニティ」と断言している。ところが翌週のact37でプリンセスはあんな姿をしていなかったと美奈子は言う。なぜ違う姿で現われたプリンセスを見て、ヴィーナスは彼女がプリンセスであるとわかったのか。ここからは私の妄想なのでお叱りを受けても困る。
ヴィーナスがPムーンの後ろ姿を見ただけでプリンセスと断言した理由は、セーラー戦士の先頭に立って敵にひとりで向かっていく姿だ。古代月の王国を徳川幕府や京都朝廷のように何百年も存続した安定政権だと思うと非対称問題は解けない。セレニティ家は、武力を持って国を治め、隣国と戦争を繰り返しながら領土を守り拡張する戦国大名のようなものだとする。または、つねに外敵からの攻撃にさらされている危うい地位にあったとする。そうでなければセーラー戦士など必要ない。この国の女王はマリー・アントワネットのように宮殿で暮らすセレブではない。みずから武器を持って先頭で戦う最強の指揮官だったとしたらどうなる。プリンセス・セレニティは10代で母から銀水晶を受け継ぎ、そのパワーを利用してセーラー戦士を後ろに従え先陣を切って戦火に飛び込んでいく。しかも、傷ついた兵士は銀水晶の力で治癒されるので戦力が衰えることがない。セレニティ家が最強の理由だ。ある意味、これほどキツい軍隊もない。どんな怪我をしようが戦列から離れることができないのだ。
この前提を受け入れるならば、非対称問題は解決がつく。いや、そもそも非対称問題など実写版においては最初から存在しなかったのだ。現世の14才の中学生と対になる前世の姿とはセーラー服のコスチュームを着ているかどうかではない。彼女たちが戦士であったという事実だ。非対称問題とは月野うさぎが前世において戦士ではなかったから起こる問題であり、プリンセス・セレニティもまた戦士であったとするなら対象形になる。

     現世   →前世

     火野レイ →セーラーマーズ(セーラー戦士

     水野亜美 →セーラーマーキュリーセーラー戦士

       :

     月野うさぎ→プリンセス・セレニティ(戦士)=セーラームーンセーラー戦士

つまり月野うさぎは変身することによって前世のプリンセスとしての武力を身につける。圧倒的な攻撃力と防御力を持つプリンセス・セレニティは、平民のセーラー戦士が着る戦闘服など必要ない。そして、セーラームーンとはプリンセス・セレニティにルナがまちがえて近衛兵が着るセーラー服を着せてしまったために現世だけに出現したキャラクターだ。そのセーラームーンに前世の冷酷非情の指揮官であるプリンセス・セレニティの人格が乗り移り、姿が変わったのがPムーンである。
セレニティとセーラームーンの違いは、セレニティと月野うさぎのパーソナリティの違いと、そこから来るセーラー戦士との人間関係だ。セレニティにとってセーラー戦士は戦闘時に使う自分の家臣であり手駒、月野うさぎにとっては大切な仲間であり友達である。この前提で最終回までのストーリーを見直すとうさぎ問題や最終回問題への新しい糸口になるはずだが*3 *4
(つづく)

*1:http://d.hatena.ne.jp/M14/20041225

*2:http://d.hatena.ne.jp/Leo16/20070211

*3:はずだがって、ここで終わりかい

*4:集中力が途切れました