私だけが選ぶ名場面ベスト10+1(その3)

東映特撮番組の特徴、それは

     第1話は金がかかっている

だ。まさに「つかみ」が大切だ。実写版セーラームーンもこの例に漏れず、第1話はゲストに渡辺典子*1、CG妖魔、CGルナと制作費がふんだんに使われている。もちろん、この時点でその事実はわからないのである。渡辺典子が二度と出なくなって、妖魔がしょぼい着ぐるみになって、ルナが歩かなくなって、ロケがそこらへんの体育館になって初めて「第1話は金かけてたな」と遠い目で思うのである。
第2話もかなり制作費がかかっている。はにわ妖魔がセーラームーンのブーメランで亜美を道連れにして回廊から下に落ちて砕ける。そこに狛犬妖魔が現われ粉々に砕けたはにわ妖魔を目から光線を発射して復元するシーンがある。このシーンをよく見ると背景の噴水や建物の壁はCGになっている。はにわが復元すると背景がシームレスにCGから実写につながるわけだ。このあたりはかなり手間がかかっている。まるで特撮番組のようだ*2
さて、この回は亜美をめぐる中学生日記テイストの切ない物語が、妖魔の出現で一転して緊迫感のあるアクションへと展開する。まさに巨匠・田崎監督の実力を見せつけられた回であった。ベスト3を選ぶとしたら誰でも必ず入れるであろう名作回なので名シーンを上げたらきりがない。私はあえてこのシーンを選んだ。

     act2・・・猫ルナ*3「亜美ちゃん、受け取って!」

妖魔に襲われる亜美、亜美が墜落、セーラームーンが救助しかし宙吊り、うさぎの本心を知る亜美、亜美が戦士になることを決心。番組のクライマックスである。以前に書いたが実写版は妖魔を倒すことに物語のカタルシスを置いていない。だから妖魔がどんなにショボくても、戦闘シーンがどんなにヘタレでも問題ないのだ。act2のクライマックスはまちがいなくここだ。
またact2は、新しいセーラー戦士が誕生するシーケンスである

     ルナが戦士を発見→うさぎがリクルート→ルナが変身アイテムを渡す

が正しく行なわれたシリーズ中の唯一の回である。なお、あのときのセーラームーンは片手で亜美を持ち、片手で自分と亜美の二人分の体重を支えていた訳なので、いくら亜美が軽くてもあそこから回廊に登るのは無理である。したがって亜美の選択はセーラー戦士になるか墜落死するかの二つに一つだったわけだが。
(つづく)

*1:ゲストといっても渡辺典子だ。私は好きだが

*2:だから特撮番組なんだって

*3:猫ルナ: http://d.hatena.ne.jp/M14/20050614