春のビデオまつり「早朝始発の殺風景」「少女は卒業しない」

この4本をぜんぶ見た人は世界で片手に余るという自負がある。

早朝始発の殺風景
【1,700円】1話25分で全6話のWOWOW。原作は青崎有吾の連作短編集。親友が夜道で暴行され恐怖のあまり引きこもりになってしまった。彼女がまた学校に来られるようになるには自分の力で犯人を捕まえるしかない。それが山田杏奈演じる主人公。ただしそのエピソードは1話と6話だけ。2話から5話は同じ高校に通う生徒が各話ごとに主人公で関連はまったく無い。大きな事件が起こるわけではない会話劇で、主人公が相手の話に感じた違和感から論理的に推理を組み立て、相手が隠していること、嘘をついていることを当てる。かといって責めるわけではなく、それによって相手のつらさを助けてあげるわけだ。4話の髙橋ひかる、5話の藤野涼子が上手すぎて、女優としてのオーラーが強すぎて、最終話の山田杏奈がくすんでしまうのが残念。

ひまわり
【1,700円】2000年の映画。麻生久美子袴田吉彦はすぐわかった。光石研堺雅人は出演することを知ってないとまったくわからない。主人公(袴田吉彦)がたまたまテレビを見ると海難事故のニュース。犠牲者の中に長く忘れていた小学校の同級生の朋美(麻生久美子)の名前が。卒業後も付き合いのあった同級生に声をかけて故郷に帰り葬式に出る。主人公が知らなかった朋美のその後、葬式に出席していた朋美の交際相手から聞く大人になってからの朋美。主人公をはじめみんな朋美にそれぞれの罪悪感があった...男優は全員が有名な中堅俳優の若かりし頃なのが感慨深い。みんな実績を積んで四半世紀後も存在感がある役者になっているんだね。あと当時22才の麻生久美子の華やかさと捕らえ所の無さが良い。

孤高の遠吠

孤高の遠吠

  • 渡辺優津紀
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孤高の遠吠
【1,500円】4人の高校生があるきっかけで地元・富士宮の不良仲間に引きずり込まれる。それは暴走族、窃盗団、暴力団とも繋がっていて、さらに対立するグループにも狙われてどんどん抜き差しならない状態に追い込まれていく...出演者のほとんどは富士宮の不良らしい。どんだけあぶない町なんだ。ストーリーらしいストーリーはなく、ひたすら喧嘩をしているだけだが誰にも感情移入できないので安心して見られるので、意外と楽しい。

少女は卒業しない
【1,700円】河合優実の初主演映画。「早朝始発の殺風景」と似ていてこちらは朝井リョウ原作の連作短編集。4人の女子高生のそれぞれの物語で関連がないのも同じ。なので河合優実が主演といっても4分の1よりちょっと多いだけ。この人がすごいのが「あれ? いま台本にないセリフをアドリブで話している?」と思えるほど芝居の流れに馴染んでしまうことなんだよね。芳根京子の初主演作、平祐奈の初主演作で感じた強烈な存在感と正反対で、河合優実の存在を消して劇中の人物だけが見えているような。ただ「サマーフィルムにのって」で見せた無駄にハイテンションの役もできるので次はそれを見たい。「早朝始発の殺風景」と「少女は卒業しない」、偶然に同じフォーマットの作品を続けてみたが、恋愛要素が無い「殺風景」のがテンポが良いのだよね。