最近に読んだ本

コロナ前は年に100冊くらい本を読んでいて自分のことを読書家だと思っていたんだけど、それは違った。単なる「通勤電車では本を読んで暇をつぶす人」だった。

私が好きな遭難シリーズ。本作は明治から平成までに起こった有名な遭難事故10件。明治時代は天気予報さえなかったので本当に気の毒だったよね。それに比べてラジオを持たずに冬山に上り5人が死亡した吾妻連峰の事故は何度も助かるチェンスがあったのに、そのすべてに悪い方の判断をしてしまった。

辻村深月のホラー小説ということだったがどちらかというとダークファンタジー。日本に古くから存在する悪の一族と、それを阻止し倒そうとする一族の戦い。ただそれは水面下の話であって、悪の一族の標的になって徐々に蝕まれていく被害者の恐怖が物語の中心になっている。その悪の影響力が、高校の学級だったり、団地の主婦の間だったり、日常のすごく狭い範囲なのが逆に怖い。

ホラー大賞受賞後も順調に作品を出し続ける著者の新作。まるで都市伝説のように知る人ぞ知る「怖がらせ屋」の話。恨みを持つ人の依頼を受けて誰かを怖がらせる。といっても後ろからワッと言って驚かせるのではなく、その人を怖い目に会わせる。エコエコアザラクのような話だが、怖がらせ屋が読者の前に姿を現わすのは第2話だけで、あとは誰かが窮地に陥ったり、ひどい目に遭うが、その裏で暗躍していたのが怖がらせ屋だったと最後に判明する。一つ前の辻村深月の作品もそうだが、怖い話でも設定にひねりがある。

学生なら誰でも入りたいと思う人気ベンチャー企業。就職試験の最終試験に6人の大学生が残った。試験の問題が、合格者を一人だけ6人で話し合って決めるというもの。無茶苦茶な話だが、これが判明するのが物語の3分の1あたりで、そこまでに6人の間には友情と信頼が芽生えているのがミソ。そして試験当日にある事件が起こり6人は窮地に追い込まれていく。それが3分の1。数年後に、あの日にいったい何が起こったのかをただ一人の合格者が関係者から聞いて回るのが残り3分の1。私があらすじを書くとぜんぜん面白くなさそうだが、グイグイ読ませる筆力と、2転3転する後半はさすが。

昨年のホラー大賞受賞作。人が死ぬ怪談をある目的のために探している主人公。呪いや祟りが本当にあるならそれを使って自殺をしたい主人公の相棒。この2人の女性が、見たら自分が死ぬ魚の噂を調査をする。途中途中に主人公が見聞きした怪談を挟みながら、ホラーというより冒険小説に近い本編が進行する。その中で怪談とはそもそも何か、自分たちはいったい何をやっているのか、この2人を行動に駆り立てる動機はなにか、以外と深い内容になっているのが新人と思えない。