8月に読んだ本

慈雨 (集英社文庫)

定年退職をした刑事が妻と四国の遍路の旅を続ける。ちょうどそのころ主人公がいた警察署では少女誘拐事件の捜査をしていた。それは主人公が昔操作をした事件に酷似していた。そしてその事件はえん罪だったかもしれない...主人公と妻の旅と回想、なかなか進まぬ捜査、元部下から電話でアドバイスを求められる主人公、そんな主人公を優しく見守る妻。話の構成も人物描写も見事、こんな骨太の小説を書いているのが女性だなんて。最後は号泣だよ。

 

ジューン・ブラッド (幻冬舎文庫)

上の写真は文庫版だが、私が古本屋で買ったのは単行本。近所に小さい店ができて表に福祉がどうしたこうしたと書いてあって廃品回収の本を売っているらしい。いくら仕入れがタダといってもこの本を100円で売って店が成り立つのか? 敵対する組の幹部を射殺したヤクザ。だがその出入りには裏があり相手の組、自分の組、警察に追われることに。途中で知り合ったキャバ嬢、引きこもりの少年がなぜか同行することになり、3人の逃走劇が続く。作者は実話系の怪談を書いていた作家だが最近はいろんなジャンルを手がけるんだな。本作もよくできているよ。

 

いちまいの絵 生きているうちに見るべき名画 (集英社新書)

帯にあるように、美術界に革命をもたらした作品について時代背景とともに解説。作者の作品は読んだことがないが名前は知っている。絵画について造形が深いなあと思ったらそういう仕事をしていた人なんだね。これは学生さんにもお勧めの一冊。

 

カゲロボ

タイトルは影武者みたいに自分そっくりのロボットでアンドロイドにまつわる連作短編集。ただしロボットが中心の話題ではなく子どもや老人が主人公の切ない話。その話もメッセージ性が強く考えさせられる。小中学生の読書感想文にお勧めできる本。どれかは自分の胸にヒットする話があるはず。

 

噛みあわない会話と、ある過去について

辻村深月の短編集。怖い話が2つあり、どちらも自分は加害者のつもりはないのに過去に人をひどく傷つけていて、その加害者から復讐される話。その主人公が叫ぶ「傷つきやすすぎる!」と。これは加害者である主人公に同情する。私も気をつけよう。もう手遅れだけど。

 

拝み屋異聞 田舎怪異百物語 (イカロスのこわい本)

まったく外れがない作者の怪談集。本作は地方で集めた怪談に加え、そこで百物語の怪談会を行うと怪奇現象が起こる家の話が4回出てくる。それがテレビや映画に出てくるようなすごい現象でないのが逆に不気味。

 

いけない

ある町で起こる事件の連作短編集。帯のコピーは大げさ。