炎の16番勝負−4本目「愛しのアイリーン」、5本目−「きらきら眼鏡」

     
TOHOシネマズ・シャンテ。それほど狭い劇場ではないのに満員だったよ。これそんなに話題の映画か? 主演は安田顕。寒村に住む42才のパチンコ店の店員が主人公。年老いた両親と住んでいる。同じパチンコ店の女性との恋に破れ、フィリピンのお見合いツアーに参加してお嫁さんをゲットする。だが彼女は貧しい家を助けるために結婚をしただけ。けっして主人公に身体を許さない。彼女を連れて家に帰ると急死した父親の葬儀の真っ最中。フィリピン人の嫁を連れてきたので怒った母親は猟銃を持って追いかけ回す...ここまで読んだら、主人公と彼女はじょじょに心を通い合わせ、母親をはじめ保守的な町の人たちとも打ち解け、幸せな家庭を築く。と思うだろ。私もそう思ったよ。途中からバイオレンスな展開になり、主人公や母親たちの小さな過ち、小さな狂気が積み重なり物語は思わぬ方向にドライブしていく。在日フィリピン人が見たら怒り心頭の映画。でも結局まともだったのはアイリーンだけで、残りの登場人物は死ぬか不幸になるというハードな物語。


     
主役は新人と池脇千鶴池脇千鶴って、私の中では安達祐実永作博美と同じカテゴリなんだよね。童顔でいくつになっても童顔の人。あと10年すると永作博美安達祐実になって、池脇千鶴永作博美になる。そのとき安達祐実は誰になっていて、誰が池脇千鶴になるのかはわからないが。テレビドラマはセーラー戦士関係以外はほとんど見ない私。池脇千鶴をチョイ役で見たことはあったような気がするが、主役でガッツリ見るのは今回が初めて。演じる役がこの人に合っていたというのはあるかもしれないが、本当に上手な女優さんだね。セリフが自然なだけでなく、発声やイントネーションが実に耳に心地よい。カーナビとかGoogle Homeをこの人の声と喋り方にしてずっと聞いていたい。偶然知り合った駅員の若者と、産業廃棄物処理センターに勤める女性。この女性は「きれい」、「楽しい」というものがたくさんあって、感性の豊かさ、屈託の無さに引かれていく青年。彼女は「心にきらきら眼鏡をかけているの。これがあるといろいろな物がきらきらして見える」。だが彼女にはそうせざるを得ない理由があり...終盤になると途端にテンポが悪くなり、その割に登場人物の行動原理がわからなくなるのでただ間延びをしているような印象になってしまうのが残念。45分くらいの短編にまとめた方が良かったかもしれない。