3月に読んだ本

オブリヴィオン

オブリヴィオン

本の雑誌」で大絶賛されていた本。誤って妻を殺してしまい服役していた主人公。やたらとちょっかいを出してくる主人公の兄、主人公を憎む妻の兄と我が子、アパートの隣の部屋の南米人の娘、主人公につきまとう昔の仲間。いろいろな人のいろいろな思惑や運命の歯車に翻弄される主人公。だがこの主人公、喧嘩が強いわけでもなく武器を持っているわけでもない。ただ一つだけ人と違う能力がある。そのために主人公と南米人の娘、我が子に危機が迫る...もうバキバキのハードボイルド。読み終わった後で作者が女性だったことを思い出した。たしかにこれはお勧めの一冊。


新本格30周年記念事業の「館」をテーマにしたアンソロジー。以前に読んだのが「白」で、これは「黒」。「白」のがクオリティが高かったような気が。


観察の練習

観察の練習

筆者が撮影した街のちょっとした風景の写真とショートエッセイ。けっして珍風景ではないのだが、そこに新しい気づきを提示する。ちょうどマスターのブログみたいなやつだな。


小説形式のデータ分析の本。登場人物はマーケティング室に配属になった課長と、若い男女の部下が一人ずつ。相談役の老人。社長から与えられた新規事業のプレゼンを期日まで作らなければならない。政府刊行物などネットなら無料ですぐに手に入るデータを使って新規事業のヒントと方針を見つけていく。成果物を目にすることはあるし、指南書もたくさん出ている。実際に何もないところから分析を始めてそこで見つけたヒントをさらに深掘りしていく過程はなかなか新しい。しかもデータ集めにはまったく金をかけていない。これもお勧めの一冊。


類書はたくさんあり何冊か読んだが、素人に理解できるぎりぎりの難しさというかなかなか刺激的な本。


記憶破断者

記憶破断者

原因はまったくわからないが数時間すると記憶がリセットされてしまう主人公。自分がそういう状態であるということもリセット前にノートに書いたメモを見ないとわからない。もう人としてのまともな生活さえ営めない。一方、他人の記憶を自由に書き換えられる男。数々の悪事を重ねていく。この二人が出会ったとき主人公に勝ち目はあるのか。自分のために、自分が憧れている話し方教室の先生を守るために主人公は起ち上がる。だが起ち上がった記憶もリセットされるのでノートを見ないとわからない...


ロジカルシンキング」はすでに存在する考えを整理することにしか使えない。まったく新しいアイデアや現状を突破する切り口を見つけるのがクリエイティブシンキングだと。内外の著名人の発想やユニークな製品やサービスはどうやって生まれたか、実例が豊富で面白く読めるのだが、じゃあ自分もやってみようと思うと方法論が整理されていないのでわからないという。


美術の力 表現の原点を辿る (光文社新書)

美術の力 表現の原点を辿る (光文社新書)

傑作として名高い作品が生まれた歴史的背景を作品を鑑賞するポイントとともに解説する。この手の本はたくさんあるが、これは日本絵画もけっこうなページ数で取り上げているのが新しい。


おまじない (単行本)

おまじない (単行本)

誰も考えつかなかったようなミステリーとか、手に汗握る冒険小説を書く才能もすごいが、大きな事件が起こるわけでもないのに登場人物に感情移入してジワッと胸に浸みる話が書ける力もすごいと思う。読んで損は無い良書。


屍人荘の殺人

屍人荘の殺人

この作品は昨年度の「このミステリーがすごい」の1位。そうかなあ、私は「かがみの孤城」のが良かったけどな。別荘に集まった大学生。そばで行われていたロックフェスティバルの会場でバイオテロがあり観客がゾンビになり別荘を取り囲むというとんでもない設定。結果的に「吹雪の山荘」、「南海の孤島」パターン。しかも別荘の中では連続殺人が起きる。ラストの犯人当てではゾンビの設定が有効に使われるのだが、このゾンビが映画のゾンビを同じ性質だと誰も疑わないのはどうよ。だが同じ性質であることがある意味フェアプレーになっている。