7月に読んだ本

夜の国のクーパー

夜の国のクーパー

著者はじめてのファンタジー小説。めずらしく早い段階でオチがわかったよ。うまいなーと思ったのが構成。ひとつの時間を語っているのだが、その場にいる人(正確にはネコ)の目から見た現在時制の章と、続きをそのネコが主人公に語って聞かせる過去時制の章が交互に繰り返される。そこで語り口を買えることによって読者を飽きさせない工夫がされている。


移行期的乱世の思考

移行期的乱世の思考

詳しい内容を忘れちまったが、いまの日本を必要以上に悲観することはない。市場拡大、人口増加、これを前提とした現代の資本主義はいずれ終焉を迎える。それがまっさきに日本に来ただけだと。成長もしない、かといって収縮もしない。そんな世の中のあり方を探っていこうという話だったように思う。この均衡はじつに難しいが、日本は江戸時代にそれをやっている。


我が家の問題

我が家の問題

「家日和」につづく著者の家庭短編集の第二弾。ダイナミックなドラマがあるのではないが、読ませる。


深泥丘奇談 (MF文庫ダ・ヴィンチ)

深泥丘奇談 (MF文庫ダ・ヴィンチ)

小説家の主人公の周りで起こる怪異を描く短編集。街と主人公が通う病院が変なのだが、それに取り込まれてしまっているというか馴染んでしまっている主人公の諦念がよく考えるといちばん不思議。


バレエ・メカニック (ハヤカワ文庫JA)

バレエ・メカニック (ハヤカワ文庫JA)

いちおうSFだけど、実際はそうでもない短編集。前著の「11」に比べると小粒だが、ノージャンルでひねりの効いた話を紡ぎ続ける著者の力量は見事。


偶然の科学

偶然の科学

なぜソニーのベーターは失敗して、松下のVHSは成功したのか。なぜソニーのMDは消えて、アップルiPodは成功したのか。この手の分析はいつも後から振り返っているだけで、結局は成功談と失敗談を後付けで語っているだけなのだ。ではこれらの明暗を分けたものは何か。経営者のセンスでもないし技術者のイノベーションでもない。ただの「偶然」であると著者は語る。


リリエンタールの末裔 (ハヤカワ文庫JA)

リリエンタールの末裔 (ハヤカワ文庫JA)

日本の宝、上田早夕里のSF短編集。この人はやはり短編がいい。奇抜な着想の物語りながら、全編に漂う物悲しさと透明な美しさ。
きょうはレスリング、サッカー、バレーボールと日本祭りだ。もちろん生で見る元気はないが明日の朝が楽しみだ。