引っ越し屋は私のヒーローだった

娘と荷造りをしていたとき

  娘「この段ボールにぜんぶ本を入れちゃったら重くて運べないかな」

  私「そうだな、いくら引っ越し屋といっても、この箱がぜんぶ本だったらつらいぞ」

  娘「だよね。じゃあ、本を半分にして、残りは軽い物を入れるよ」

  私「そうだ。金さえ払えば何をしてもいいというものではない。って、それを入れたら本と重量が変わらないじゃないか」

と言いながら荷造りをした段ボール、引っ越し屋は3ついっぺんに持って階段を降りていった。なにしろ元の住まいは古いマンションなので4階なのにエレベータが無いのだ。引っ越し屋の兄さんの持てるかどうかの基準は重量ではなく、手が届くかどうかのようだ。3人で来て、リーダー格の兄さんは背が高くてがっしりしているが、あとの二人は小柄で痩せている。その子分も親分と同じように荷物を運んでいる。女房が子分に「ねえ、なにを食べてるの? どういう食事をするとそんなに力が出るの?」としつこく食い下がって子分も困っていた。量はわからないが、食ってるものはわしらと一緒だと思うぞ。それにそれを知ったところで何の役にも立たないだろう。私にそれを食べさせてもさらにデブになるだけだ。
TOEICが900点で、プレゼンも上手で、ディペードも達者で、起業のアイデアをいつも数十個持っていて、着々と準備を進めている人。だが、そういう人だけでも社会は回っていかないのだ。重い段ボールを3個いっぺんに運べる人もいないと。どっちが偉いかなんて決められない。昨日の私に必要なのは意識高い系の起業家より段ボールの方の人材だ。チャーハンを上手に作れる人も必要だし、子どもを産んで良い子に育てられる人もいないと困る。キモいファンと笑顔で握手できる人だって社会には必要だ。なにをいまさらと当たり前のことなんだが、ついつい忘れてしまう。引っ越しのサカイの兄さんたち、かっこよかった