局所最適化は街を滅ぼす

もう長いこと貸店舗のままになっているここ、以前は食料品のスーパー「つるかめランド」があって繁盛していた。右隣がミスド、その隣がドンキ、その斜向かいが西友というそれなりの好立地なのだ。しかも、生鮮食料品は西友より物が良くて安い。本八幡はこの他にも大型のスーパーが2件、駅の構内に八百屋が1件。それぞれ得手不得手があり、品揃えに違いがある。また競って値段を下げているので、この5件を買い回るとかなり安く買い物ができる。私は結婚してから5回引っ越しをしているが、6カ所の中で本八幡の物価がいちばん安い、札幌より安いと女房が言っている。
この写真、歩道と車道の間に緑色のコーンと棒で柵が作られているのが見えるだろう。これは駐輪禁止のしるし。以前は買い物客の自転車がここに停められていた。この場所が駐輪禁止になってからこのスーパーが閉店するのに半年もかからなかった。本八幡は古い町なので道路が狭い。しかも駐車場を持っている店はほとんどないので、徒歩か自転車で移動するのが基本である。私も前の家ではコンビニやクリーニング屋に行くのにも車を使っていたが、こっちに引っ越してきてから遠出をするとき以外に車に乗らなくなった。
こういう町はあちこちに自転車の固まりができて歩行者や自動車の邪魔になる。あるとき市川市が違法駐輪車の駆逐に乗り出し、このような柵を作り、係員を配置し自転車を徹底的に占めだした。その活動そのものは否定しない。歩きやすくなった場所もある。だが、人や車の邪魔になってないなら自転車があってもいいじゃないか。この写真の道路は片側1車線、対面通行の6m道路。だが、めったに車が入ってこない。ここを抜けて駅の方に行くと、地図の上ではガードがあり線路の向こうに抜けられるのだが、その先の道が恐ろしく狭いのでわざわざこの道を使わない。ましてやこのあたりで車がすれ違うことはないので、自転車が停まっていて道が狭くなっていても誰も困らないのだ。店側は駐輪大歓迎だったのに駐輪禁止。しかも市営の駐輪場ははるか彼方。いったい誰のための駐輪禁止なのか。こうなると、駐車場や駐輪場を備えたスーパーでないとお客を呼べない。結局、駅前はどんどんさびれて買い物は車で遠くのショッピングセンターに行くドーナツ化現象を行政が加速させている。
自分の家だけをきれいにすればいいなら、ゴミをぜんぶ窓から放り出せばいい。部分しか考えない都市計画はそれと同じだ。エコ活動もそうなのだが、総社会資本、市民全体のサービスの極大化を考えないなら、むしろ何もしないほうがいい。これから超高齢化社会を迎える日本は、駅や住宅地に隣接した商店街が必要だ。駅を中心に大中小3つの同心円を作り、外側の円には駐車場(もちろん有料で可)を配備し、遠くから来た人はそこで車を降りる。内側の円は商店と駐輪場、中心は徒歩だけの移動として駅と飲食店。結局、イオンモールを町全体で構成しているわけだが、10年、20年の計でそういう町作りはできないものか。「再開発」には巨大なビルを作らなくてもいい。再開発と言うより再配置。こればかりは民間ではできない。行政の力が必要であり、冬の時代を迎える21世紀の日本に必要なのは「小さな政府」ではなくて「大きな政府」なのかもしれない