春の映画まつり「単館上映を観るには有給が必要なのだ」

     
中合作映画だが、主演は台湾の世界的スターのリン・チーリン。この映画、一昨年には完成していたので公開を楽しみにしていたのに上映されないままお蔵入り。DVDが発売されるということもなく、そのまま日の目を見ないまま終わるところだったが、昨年に開催された「お蔵出し映画祭2014」でグランプリを受賞。今年になって池袋で公開の運びとなった。だが上映は1日1回、それも昼間。しかたない、有給を取って観に行ってきたよ。ストーリーはベタ、もうベタベタ。昔の日活映画のノリ。主人公の若き日の舞台が北海道の夕張、その10年後が上海。夕張でなにかが起こったがそれの全貌が最後まで明かされず、物語は夕張と上海が交互に進行する。リン・チーリンは夕張編では日本語、上海編では中国語で話している。彼女がチョコレートを作っている写真があったので、パティシエをめざす彼女が日本で修行する話かと思ったら全然違った。物語はベタなのだが最後の方にひねりが加えてあって、そのひねりがすごく強引でびっくりした。こういう脚本って平成の日本では作れないよね。リン・チーリンをスクリーンで観たのは初めてだが、美しさが半端ないよ。この人、顔のパーツがどれも自己主張してない。日本人の売れっ子の女優と比べてもすべて控えめ。それでいてどんな表情をしても非の打ち所がない美女。可愛くもあり、エレガントでもある。リン・チーリンが絵の勉強のために冬の夕張に来るところから物語が始まるが、日本人が「なんでこんな寒い田舎町に来たの?」と聞くと「『幸せの黄色いハンカチ』を観て景色が綺麗だったから」だと。でも冬に来ちゃあダメだぞ。
     
原作を昨年に読んでいて、映像化されたのなら是非観に行かねばならないと、誰が出ているのかとか事前情報なしで行った。ぐっ、主演はともちんか。「劇場霊」の悪夢が。いや、映画が怖かったから悪夢だったのではないよ。幸い、この話の主役は狂言回しなのでほとんど存在感がない。あのまま原作どおりに終われば「ともちん悪くなかったよ」とここに書いたかもしれないが、映画用に追加した最後の部分でともちん出突っ張り。これはキツい。ファンの人が読んでいたら気を悪くしないで欲しいが彼女は女優としてやっていくには致命的な欠点がある。鼻から下の部分がスムーズに動いてないのだ。これは今後の鍛錬でなんとかなるものなのか、加工をしているとああなってしまうのか私はわからない。北川景子が出演したテレビドラマ「HERO」で吉田羊を初めて見て、顔のアップになったとき「吉田羊は顔のどこにどういう筋肉があり、それをどう動かすとどういう表情になるのかを知っている」と書いた。それができると大げさな表情を作らなくても感情の表現ができる。この映画でのともちん、どんな表情でも口が半開きなんだよな。でも彼女のファンのために擁護をしておくと、顔のアップがあるテレビや映画ではなく舞台なら生きる道があると思うぞ。あと主人公がいつもマスクをしている役とかな。
     
主役は森川葵ちゃん。男子校と女子校が合併することになり、最後の夏休みにそれぞれの演劇部が合同合宿をすることになった。そこで起こる怪異の話。それを男子の目から見た「男子編」と女子の目から見た「女子編」の2本立て。ストーリーの6割くらいは共通だが、最後の方は「男子編」では男子だけが経験することや男子だけが知り得た事実が多く、同じく女子編は女子だけと、2本を合わせると全貌が明らかになる。私は前の2つの映画の関係で男子編→女子編を観たが、逆のが良かった。男子編だけの事実の方が量が多く、女子編だけの内容は男子編でも想像できるが、男子編だけの内容は女子編ではまったくわからない。それを言っておいてくれよ。ポスターでわかると思うが、終盤で正体がわかってしまうとホラーというより怪物映画になってしまう。さらに男子編を観て正体がわかっているので女子編は最初から怪物映画。いっそ怪異の正体が男子編と女子編では違っていたら傑作だったのに。
最後の映画館でこの映画のチラシがあった。
     
もちろんタイの映画だ。Wikiで調べたらこのタイトルはアタックNo1の原作者の了解をちゃんと取ったのだそうだ。さすが仏教国。