11月に読んだ本

この作者、亡くなっていたんだねえ。48才だって。異母兄弟の音響技師の兄を亡くした妹。戸籍上は兄妹ながら一人の男性として慕っていた。その兄が全国各地で拾ったの音の風景を訪ねる旅に出る。これは何の音なのか、兄はなぜこれをクリップしたのかを探る連作短編集。読み進めると途中で違和感があり、それがラストの大ネタにつながる。最終章のガチャガチャ感がすごく残念。


犯人に告ぐ2 闇の蜃気楼

犯人に告ぐ2 闇の蜃気楼

名作「犯人に告ぐ」の第二弾。今回はテレビの公開捜査ではなく、奇抜な誘拐事件を企む犯人側の描写に重点が置かれた小説になっている。おなじみの決めぜりふ「今夜は震えて眠れ」も最後の1ページに出てくるよ。それにしてもオレオレ詐欺と誘拐を組み合わせた作者のアイデアが秀逸。ラストの大捕物も楽しい。


たしか、この年の「このミステリーがすごい」で上位に入った作品だった。私のように「不思議の国のアリス」を読んだことがない人は楽しさが半減する。主人公は不思議の国のアリスの世界にそっくりな妙にリアルな夢を見る。その夢は翌日も続き、しかも登場人物はそれぞれ実在の誰かのアバターで、みんなが同じ夢を見ているのに気づく。そして夢の中でアバターが殺されると、現実世界でも死ぬことになる...この話のオチに途中で気がついてしまった。きっとこう来るなと。そのとおりだったのだが、もっと複雑だった。


あの人はなぜ、東大卒に勝てるのか―――論理思考のシンプルな本質

あの人はなぜ、東大卒に勝てるのか―――論理思考のシンプルな本質

と言ってる筆者は東大卒。ビジネスは考えることこそ重要で、そこには学歴は関係ないという主張。逆に東大卒ではない君はもっと考えなければいけないと。ではどう考えるかだが...忘れちまったぜい。書きながら考えた方が良いのだけ覚えている。


FKB饗宴6 (竹書房文庫)

FKB饗宴6 (竹書房文庫)

寝る前に読んでいたホラー短編集。なかなかの佳作ぞろい。傑作だったら眠れなくなっちゃうから佳作がちょうど良い。


妖怪探偵・百目 1: 朱塗の街 (光文社文庫)

妖怪探偵・百目 1: 朱塗の街 (光文社文庫)

私が好きなSF作家の上田早夕里はこんな本も書いてたんだ。舞台は人間と妖怪が暮らす街。だが水木しげる先生のような牧歌的な世界ではなく、妖怪は人間の魂を食べる。ただ人間を敵に回すことの愚も妖怪は知っている。その微妙な均衡が成り立っている世界で、主人公は美女の百目。ふだんは目を隠しているが、全開すると高感度の妖怪探知機になり、それを使って探偵業をしている。だが主人公はそれほど活躍しなくて、アシスタントの人間の青年とか、同じ街の妖怪の話とか。


凪の司祭

凪の司祭

ある理由で2,000人を殺害することに決めた女性。その女性の殺害計画を立てる数人のブレインたち。重火器も持たず訓練も受けてないこの女性がどうやってショッピングセンターの客2,000人を殺せるのか? それを阻止しようとする警察と、その裏をかいて計画を遂行する女性の駆け引き。後味はひらすら悪いがアイデアはすごい。ちなみに爆弾でいっぺんに殺害するのではなく、一人一人、または数人ずつ殺害する。なのでよけいに後味が悪い。


聖母

聖母

以前に読んだ「暗黒女子」はいまいちだったが、これはどうだ? 本の帯に「驚愕のラスト20ページ」と書いてあった。たしかに驚くがそれほど奇抜でもないんだよなあ。児童の連続殺害事件。途中で犯人の視点になるのでフーダニットではない。なぜか自分が殺害したあとに、後始末をしてくれている人がいる。いったい何が起こっているのか...ラストで2つのサプライズがあるのだが、なんか仕掛けのための仕掛けなんだよなあ。次回作に期待だ。