8月に読んだ本

考える力が身につく ディープな倫理

考える力が身につく ディープな倫理

大学入試の倫理の問題をもとに倫理の諸問題を解説するというなかなか面白い着眼点の本。とくに前半のセンター試験編がおもしろい。4択問題なのだが、「倫理」という点ではすべて合っている。ただし(あたりまえだが)問題の題意に合っているのは一つしかない。題意は功利主義の立場なのだが、選択肢の1は実存主義の立場からの言説、2はプラグマディズムというように。歴史のように知識がないと答えられない問題ではない、人の道の話なので8割方は正解できるだろうと思ったらほとんど不正解だったよ。だって、ぜんぶ正しいんだもん。


MASTERキートン」の原作者が書いたミステリー。なかなか凝った展開で楽しめる。なによりマンガ界とくに編集者の仕事とは何かが詳細に語られている。マンガ家の家に行って原稿をもらうのが仕事だと思っていたのだが、大御所は別だがマンガといっしょに編集者がストーリーを考えてあげるそうだ。


アニメ化もされていてなんとなく名前は知っていたが読むのは初めて。太古の生物からの記憶をすべて持っている少女・エマノンの連作短編集。これはドラマ化しやすいだろう。45分枠で2話とかにしてな。以前はこういうことを書いたあとに「沢井美優でお願いしたい」とか「小松彩夏でお願いしたい」とか書いたものだが、いつのまにか少女役はできない年令になっているセーラー戦士たち。


議論の作法 (文春新書)

議論の作法 (文春新書)

櫻井よしこの対談集。なぜ反日を続けるのかを中韓の学者相手に論戦をしたり、安倍首相との対談もある。あと地球温暖化の嘘を訴える学者も興味深い。すらすら読めてしまうが、相手の意見を引き出す聞き手としてのテクニック、それに賛同しながらも反論を叩きつける論者としての力強さ。この人すごいわ。


ずっと、そばにいる―競作集・怪談実話系 (角川文庫)

ずっと、そばにいる―競作集・怪談実話系 (角川文庫)

角川文庫の実話怪談シリーズ全三巻の最後。読み終わっちまったぜい。よく見たらメディアファクトリーから出ている幽文庫の傑作集じゃないか。今度はそっちを読めば良いのか。


道徳の時間

道徳の時間

江戸川乱歩賞の受賞作。受賞作は必ず巻末に最終審査作品に対する審査員からの寸評が載っている。この作品、「決め手がなく最後は多数決になった」、「今年は不作。該当作なしが正しいと思った」だのボロクソ。謎がつぎつぎに提示される前半は面白い。ところが犯行の動機に無理がありすぎ、前半で広げた風呂敷の畳み方が雑で尻つぼみになる残念さ。次作に期待しよう。


これは良書。安保法案や原発再稼働に反対する人たちの意見がまったく胸に響かない。「反対意見」という言葉があるが、あの人たちの口から出るのは「反対」だけで「意見」がない。この空虚さはなんだろうとずっと思っていた。この本の前半で日本の政治史、思想史を展開しながら「日本のリベラルは反政府、反権力という立場を取ってきた。これは単に政治的な立場であって政治思想ではない。その点で欧米のリベラルとは様相がまったく違う」。これだよ、これ。


ジャングルブック」じゃなくて「ブック・ジャングル」な。図書館に閉じ込められた5人の男女。毒針がついたラジコンのヘリコプターが彼らを襲ってくる。撃退する方法を思いついて反撃をすると、別のヘリコプターが彼らの裏をかいてまた襲ってくる。閉ざされた空間で、攻撃方法は限られているが、防御方法も限られている中での男女と犯人の知恵比べ。


名作コピーの教え

名作コピーの教え

過去の名作コピーを読みながら作者がどこに工夫してどういう表現にしたかを解説する。この本で取り上げるコピーは「おいしい生活」のような一行のキャッチコピーではなくて、製品やサービスを訴える原稿用紙半分から1枚分くらいの長いやつね。この本を読むと、とても私のような凡人にできる芸当ではないと思ってしまう。だが作者は「名作のコピー、名人と言われるコピーライターはけっして才能とかではありません。ひたすら推敲と手直しです」。この本で解説されているプロの技を読むと、すべてがあの人みたいな人ばかりではないとは思うが、デザイン業界って甘くね?と思ってしまう。良書なのだが、3000円もするんだよ。