冬休み映画まつり「ゼロ・グラビティ」

毎月の読書感想文にも書いているとおり、作品の完成度もさることながら、なにか新しい物を作りだそうとする作家の気概とか志に私は魅せられる。その点ではこの映画は私の中では今年度のチャレンジ・スピリット賞だ。いやはや、合衆国の映画産業の底力を見せつけられた。
話は実に単純。「宇宙ステーションや帰還用のロケットが壊れてしまったサンドラ・ブロックがどうやって地球に戻るか」。もっと整理すれば川柳にまとめられそうな内容だ。予告編にある彼女が宇宙に投げ出されるシーン。てっきり彼女をみんなで救出する話だと思ったら違った。あれは序章でジョージ・クルーニーがすぐに助けに来る。そしてそこから物語は始まる。ロシアが不要になった自国の衛星を自爆させたら、その破片が群れになって地球を周回する。それが軌道上の別の衛星を破壊し破片が増殖。つぎつぎと衛星や宇宙ステーションを巻き込んでいく。
宇宙空間は無重力なのでフワフワしているイメージがあるが、もう一つの特徴か速度が落ちないこと。主人公が地球に戻るためにある目的とある方法で高速移動をするがなにかにしがみつかなければ止まれない。劇中に何回かある制止シーンがこの映画の見せ場。遠景はCGだとしても、上下左右もなくサンドラ・ブロックが吹き飛ばされたりひっくり返ったりしながら移動するシーンはどうやって撮影したのか、初めて見る映像だった。
またこの映画のいちばんのアイデアサンドラ・ブロックの下でいつも地球が回っている。それが映像に美しさと緊張を与える。川柳の内容なので時間は90分と短いが、映像のきれいさと緊張感でなかなかのお勧め